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2014-06-30 12:38

プーチン露大統領の今秋訪日は大丈夫か?

飯島 一孝  ジャーナリスト
 ウクライナ紛争は依然として解決のめどが立たず、今秋に予定されているプーチン大統領の訪日に暗雲が垂れこめている。ロシア外交関係者は「(大統領の訪日は)テーブルの上に残っている」としながらも、「一番大事なことは準備のプロセスが止まっていることだ」と語り、岸田文雄外相の訪露準備が再開しないことに不安感を示している。岸田外相の訪露は、もともと4月下旬にモスクワで予定されていた主要8カ国(G8)外相会合に合わせて計画された。ところが、ウクライナ南部クリミア半島の編入問題で外相会合の開催が見送られ、さらに、米欧とロシアの対立が深まったことから日本政府は4月17日、岸田外相の訪露を延期した。

 その後も日本政府は外相訪露を「プーチン氏来日に向けて欠かせない」として可能性を探ってきた。だが、ロシアがクリミア半島編入を強行し、米欧主導のG8首脳会合がロシアの出席停止を決め、経済制裁を発動したことから、外相訪露の見通しが立たなくなった。プーチン氏来日を何とかして実現したい安倍晋三首相は欧州歴訪中の4月30日、メルケル・ドイツ首相との会談後の会見で「ロシアとの意思疎通が重要だ」と発言、ロシアとの対話の重要性をアピールした。だが、その後もロシアはウクライナの親露派勢力を支援、事態解決に真剣に取り組まないとして米欧側は経済制裁に踏み切り、解決の見通しはたっていない。

 その後、日本政府もG7に同調して対露制裁に加わったため、プーチン大統領は通信社との会見で不快感を示し、「日本が(北方領土問題の)交渉プロセスを止めている」と批判したほど。その後、大統領は共同通信の質問に答え、今秋予定される日本訪問について「招待があれば当然行く」と実現への意欲を示していた。ところが、最近になってロシア外交関係者は「日本政府から岸田外相の訪露の準備の話がまだない。日本側はロシアとの対話復活のため、なぜ何もしないのか」と不満を漏らしている。例年7、8月はロシアの夏休みの季節なので準備が難しいことから、それ以前に準備に入ることが望ましいと話している。

 日本側とすれば、米欧がウクライナ情勢を憂慮し、懸命に対応しているだけに、それを無視して外相訪露の準備に入るとG7諸国との関係だけでなく、日米同盟にも影響が出かねないと考えているのだろう。だが、欧州諸国からは様々な接触があるのに、日本側は欧米諸国との約束を守って非公式の接触さえも控えていることにロシア側は不満を募らせているようだ。安倍政権は特定秘密保護法制定、さらには集団的自衛権問題などに精力を集中する余り、重要な外交が手薄になっているのではないか。米国に気兼ねして手をこまねくのではなく、もっと知恵を絞って対露関係の改善に本腰を入れるべきではないだろうか。
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