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2014-07-02 20:49

(連載1)日本の安全保障感覚は、世界の非常識、孤児

中村  仁  元全国紙記者
 集団的自衛権が行使できるようにした新憲法解釈を政府は7月1日、閣議で決めました。その表現をめぐって、見解が真っ二つに割れており、今後、国会の議論で時間を空費することでしょう。細部にこだわる日本の安全保障感覚は世界の非常識というか、世界の孤児みたいな感じですね。2日の新聞を読み比べていて、なんでこんなに、記事の本記の表現も、社説における解釈も違うのかと戸惑いました。というよりそれを通り越して、驚きましたね。朝日新聞の1面は「集団的自衛権、閣議決定」の見出しのもとに、「集団的自衛権の行使を認めるために、憲法解釈を変える閣議決定をした」と書きました。読売新聞は「集団的自衛権、限定容認」の見出しで「集団的自衛権の行使を限定容認する新たな政府見解を決定した」とあります。

 ざっと読むと、同じようなことをいっているのだろう、と思いたくなります。それがよく読んでいくと、全然、違うのですね。読売は「新たな政府見解の決定」、朝日は「憲法解釈を変える決定」です。なぜ読売はわざわざ「政府見解」と書き、朝日はストレートに「憲法解釈の変更」としたのでしょうか。深いわけがありそうですね。

 読売は解説特集で「解釈の再整理という意味で一部変更だが、憲法解釈の論理的整合性、法的安定性を維持しており、解釈改憲ではない」(政府の想定問答集を引用)と、持ってまわった言い方をしています。社説でも「解釈改憲とは本質的に異なる。従来の抑制的だった憲法解釈を適正化した」と、くどい説明していますね。安倍政権は公明党への配慮、さらに今後、予想される違憲訴訟などをすり抜けるには、「憲法解釈の適正化」という曖昧な表現にしておいたほうがいい、と考えたのかもしれません。そうだったとしても、新聞が政府の表現を踏襲するのはどうでしょうか。どう考えても、今回の決定は「政府見解の変更」です。読売がそこまで政府と一体になってしまうのは残念なことです。ひとこと「これは実質的な憲法解釈の変更である」と踏み込まなければなりません。

 朝日の表現に触れる前に、集団的自衛権の行使の支持派で、読売と同じ立場の産経新聞の社説は「集団的自衛権の行使を容認するための憲法解釈の変更を閣議決定」です。これが正しいと思いますよ。ただでさえ、賛否が対立して、議論が迷走しがちな今回の問題が、こんな言葉遣いの次元で混乱するようでは、先が思いやられます。(つづく)
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