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2014-07-04 10:04

(連載3)日本の安全保障感覚は、世界の非常識、孤児

中村  仁  元全国紙記者
 そうした経緯もあるため、閣議決定の時の本文、社説の表現にこだわるのでしょう。とにかく国の基本である安全保障政策で国論が真っ二つに割れ、どちらが正しいのか、国民は戸惑っていることでしょう。そのひとつの理由が世論調査のやり方にあるとすれば、複数の世論調査結果を比較、分析する専門機関があってもいいですよね。

 「解釈改憲論」にここで触れます。「解釈改憲は抜け道であり、憲法の条文そのものを改正すべきだ」との主張が聞かれます。本当はそのほうがすっきりしますね。解釈改憲より、憲法改正のほうがハードルが高く、なかなか実現しないだろうと知ったうえで、「解釈改憲」でなく「憲法改正」をやらせようとしているのでしょう。「ではあなたは、集団的自衛権の行使を容認する条文改正に賛成ですか、反対ですか」と聞けば、そういう人たちは「反対」なのです。いずれにせよ、反対なのですよ。それならそう書けばいいのです。「憲法改正をせよ。その時もわたしは反対する」と。そうなら「憲法改正」を提唱すべきではありません。

 もうひとつ。集団的自衛権の行使をすぐ「戦争」に結びつけたがる人たちがいます。自衛のための最小限の権利行使と、「戦争」とは違います。「戦場」をすぐ「戦争」に置き換えるのも問題ですね。憲法が禁止している「戦争」は「侵略戦争」のことであり、今の日本がどこかの国に対して軍事力を行使し、領土や資源を奪う、あるいは政権を転覆させるということは、まずありえません。「自衛」といいつつ「戦争」に進んだとか、その区別がつかなくなるとか、いう人もいます。それに歯止めをかける役目を負っているのが国会であり、有権者でしょう。安倍首相ひとり頑張っても「侵略戦争」などできる時代ではありません。

 また、あるオピニオン誌に「大江健三郎氏は、戦争の準備をすれば、戦争に近づくといっている」として「お主、正気かい」と詰問する対談が載っていました。すぐ「戦争だ」、「戦争だ」と騒ぐほうも問題なら、感情論にすりかえて反発するほうも問題ですね。同じ雑誌に、保守派で著名な京大名誉教授の「大宰相の道を歩み始めた安倍総理」という記事が載りました。もう大宰相との評価をくだすのですかね。気が早いですね。とにかく、安全保障の問題を戦争にすりかえ、国民を反対に誘導するのはやめにしようではありませんか。厳しさをます国際環境を念頭に、もっと冷徹に考えるべきだと思います。(おわり)
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