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2014-08-18 18:21

(連載1)強硬策に展望はあるのか

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた安倍政権の動きが本格化した。防衛省は、14日早朝から辺野古沖の埋め立て予定海域で立ち入り禁止区域を示すブイ(浮標灯)とフロート(浮き具)を敷設、次いで17日から18日にかけて海底ボーリング調査用の台船を設置、早速ボーリングを開始した。禁止区域設定に反発する移設反対の住民らがカヌーや小舟で押し掛け小競り合いが連日続いているが、反対派は手も足も出ない。テレビの人気ドラマ「海猿」で見た海上保安庁の屈強な保安官が押し掛けた小舟を強制的に排除する光景は、私の頭の中で米軍と対峙する本土復帰前の沖縄闘争の光景と二重写しになる。尖閣諸島海域で中国公船を追う海保だから、移設反対派が乗った小舟など、有無も言わせないようだ。海上警備のプロが普天間飛行場の辺野古移設という、極めて政治的で国と沖縄の深い溝をつくった刺激的な問題の当事者となった光景を目の当たりにすると、私などは率直に言って「そこまでやるか」である。海上保安庁は「安全確保のため指導した」と説明するが、何としても工事を急ぎたい安倍政権が移設着工の既成事実化を急がせたことは間違いない。

 菅官房長官は記者会見で「現場海域の安全確保を最優先に法令に基づいて適切に対処していると認識している」と語っている。昨年暮れ、仲井真弘多知事は安倍首相との差しの会談でかつてない潤沢な沖縄振興予算と過重な基地負担の軽減に「できることは何でもする」と約束され、国が求めた辺野古埋め立て申請を容認した。菅氏は、知事が埋め立てを認めたのだから「移設工事は粛々と進める」と淡々としたもので、反対派住民の抵抗は織り込み済みだ。現場海域の混乱を気にする風はない。今さら、移設計画を見直すことなどしない、あり得ないというわけだ。

 官房長官が強気なのはもちろん安倍首相の意を体してことで、その首相が7月上旬、防衛省の幹部を官邸に呼びつけ「さっさとやれ」と叱責したという。知事の埋め立ての承認はもらった。関連する予算は本年度予備費で手当てしている。さらに補正予算の追加も準備中だ。移設反対派の妨害活動を抑えるため、日米協定や漁業操業制限法に基づく立ち入り禁止区域の拡大も官報で告示している。首相とすれば、埋め立て作業を進める上で何も問題はない。だから、「何をもたもたしているのか」と言いたかったのだろう。

 だが政権は地元に対して「丁寧に説明をし、理解を得たい」と言っていた。首相も小野寺防衛相も、である。その言葉に偽りはないと思うが、現実の動きは逆だ。政府は移設作業を反対派の抗議行動から守るため拡大した立ち入り禁止海域は、これまでの沿岸から50メートルから埋め立て予定地が丸ごと収まるよう最大2キロ沖まで広げた。テレビや新聞紙面の写真でみると、真っ青できれいな海岸に赤い浮きが延々と浮かんでいる。この中に反対派が入れば刑事特別法の適用もあり得るという。(つづく)
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