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2014-09-05 11:14

(連載2)難所を迎えた安倍改造政権

中村  仁  元全国紙記者
 政権が難所にさしかかっているというのは、次の期限を明示しないで、消費増税を延期できないからです。2年先なのか、3年先なのですか。3年先だと、日本は財政再建を二の次にしているといわれます。先送りしたら、その間の社会保障財源はどうするのでしょうか、国債ですか、社会保障費の思い切った削減ですか。どういう選択をしても、難問が次々にでてきます。7-9月のGDP統計が発表される11月中旬以降には決断しなければ、なりません。そのあたりからいろいろな観測気球が政権の周辺からあがります。増税をしたらした、増税を先送りしたらしたで、その事後措置をめぐり、議論は沸騰し、迷走するのでしょう。

 株価はどうでしょうか。改造内閣の発足を受けて、株価は上がりました。政権発足時には1万円だった株価は1万5700円になりました。年金資金の株式運用が増える、円安が進むという期待からでしょうか。もっとも株価はこのところ、アベノミクス効果が出尽くしたとみられ、横ばい状態です。日銀の異次元緩和も、次のサプライズはもうない、そろそろ出口(緩和の停止、縮小)を考えておけ、という状況になってきました。円安による輸出拡大も、製造業の海外移転で効果がなくなってきています。「アベノミクスの陰り」がささやかれているのです。

 株価は経済、景気の指標です。アベノミクスは経済、景気を先によくするより、その結果である指標を先行させてよくすることに没頭してきたようです。異次元緩和は、実体経済がよくなる前にマネー市場に資金がどっと流入し、株などの資産価格をあげました。そうなるだろうと読んだ海外の投資家もいち早く、日本投資に走りました。株価は内閣支持率に連動するそうです。政権も日銀総裁も胸をはりました。これから先はどうでしょうか。もうあまり期待できないとなると、追加緩和の要求がでてきます。これ以上、緩和をやると、その時だけは効果があっても、緩和から撤退する際、株価、資産価格の下落を招き、デフレに陥りかねません。

 最近の海外論調をみると、「アベノミクスの懐疑の目」、「的を外すアベノミクス」(いずれも日経の転載)といった感じです。日本をはやすだけはやして、転機がくると、手のひらを返したように、突き放すのですね。そこで異次元緩和の追加ですか。弊害は大きい、それでもやまれず、目先の株価維持策をとるべきか、政権は迷走するでしょう。先進国共通の問題、とくに日欧における成長率の低下が顕著です。それは世界経済の構造変化から起きてきており、金融緩和という点滴では、一過性の効果しかない、というのが経済論調の大勢を占めるようになっているような気がします。(おわり)
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