国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2014-09-24 11:07

(連載2)消費税10%をめぐる観測気球

中村  仁  元全国紙記者
 オーソドックスなのは、当然、黒田日銀総裁で、「先送りすると、財政健全化の意思が市場から疑念を持たれる。そうなると政府、日銀としても対応のしようがない。増税による経済の落ち込みは財政、金融政策で対応できる」と強調しました。経済学からすると、そうなのでしょう。政治学からすると、どうでしょうか。冒頭に申しあげました首相の本音が政治学です。

 実際の税制は政治経済学で決まります。予定通りの実施は困難と、政治学が判断したあとは、経済学の出番です。延期するといっても、何年も先送りではなく、たとえば「判断は2015年末の予算編成期に1年ずらす。10%引き上げの実施時期は2016年4月とし、6ヶ月だけ延期し、そのことを明示する」というのはどうでしょうか。今年の12月にしようと思っていた判断を一年後ずらすことの意味は大きいでしょう。その間に、経済状況、政治状況を落ち着いて見極めるのです。

 絶対に予定通り実施なのか、6ヶ月の延期か、その違いだけで、国債市場における日本の信用が暴落するか否かの状況に追い込まれるとは思えません。6ヶ月の延期が1年、1年半と長くなると、日本のリスクは増します。予定通りでも消費や景気の落ち込みのリスク、延期でも財政赤字拡大やマネー市場の波乱のリスク、いずれにしてもリスクが伴いますね。官邸、財務省、日銀はいずれの場合にも生じるであろうリスクを想定し、財政、金融面でどう備えるかの検討に入っていることと思いますよ。実施か延期かの二者択一の検討ではなく、総合的な判断と準備をすでに始めているでしょう。

 以前に書いたブログで、消費増税の必要条件は、軽減税率の導入だと、申し上げました。その後、軽減税率の導入が急テンポで検討されている気配はあるのでしょうか。軽減税率の強硬な支持派であった新聞界は、朝日新聞の慰安婦報道の誤報・捏造、原発事故報道の誤報・捏造ですっかり信用を落としています。「新聞は民主主義社会にとって不可欠な公共財」が揺らぎ、軽減税率適用の議論を進めにくくなっていますね。こんなこともあり、新聞界はどちらかといえば、ほとぼりが冷めるのを待とう、つまり消費増税の延期派になっているような気がします。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム