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2014-10-23 11:52

(連載2)試練に立つ「安倍1強」

尾形 宣夫  ジャーナリスト
 辞任劇で安倍政権の歯車に狂いが生じるかどうかは現状では分からないが、これまでのような「安倍1強」に陰りが見えたのは間違いないだろう。となると、目前に迫っている消費増税の判断、集団的自衛権行使関連の法案づくりに新たな問題が出ないとは限らない。
 
 消費増税を巡る政権与党内の意見はばらばらだ。首相は民主党政権当時、消費増税を決めた民主、自民、公明の3党合意の当事者の1人だった谷垣禎一氏を自民党幹事長に就けた。来年10月からの消費増税をにらんだトップ人事だったが、景気動向が思わしくない。個人消費、輸出、設備投資などの景気指標はいずれも低迷、10月の月例経済報告はまたも景気判断を引き下げた。このままでは7~9月のGDPに期待することはできそうもない。消費税を法律どおり来年10月から再び引き上げるべきだとする谷垣氏が党内をまとめ切れるのか。首相は最終的に「私が決める」と言っているが、党内の引き上げ延期論を説得するためには、新たな経済対策や低所得者対策でつじつまを合わせるしかない。首相が谷垣幹事長に期待した党内調整は、このままでは難しい。谷垣氏の政治力が期待できなければ、首相の出番とならざるをえない。自民党の了承を取り付けるには、首相の求心力が機能していることが前提だ。党内が紛糾するようだと、予定どおりの消費増税は諦めざるをえない。
 
 閣議決定までこぎつけた集団的自衛権行使関連法案は来春以降に先送りされた。政権は、武力行使に至らないグレーゾーンから集団的自衛権に関わるものまで幅広い法整備を一括して行う方針だが、関連法は自衛隊法や武力攻撃事態法の改正など10本を超える。法案策定には数カ月かかるだろうし、仮に法案がまとまったとしても、集団的自衛権行使に慎重な公明党の了承を取り付けるのは容易ではない。もし安倍政権に隙間風が吹くようだと、法案作成はもとより国会審議が難航するのは避けられない。
 
 問題はこれだけにとどまらない。安倍政権は今国会で地方創生や女性の活躍を実現するための関連法案や、安倍首相が積極的な「カジノ法案」の成立を目指している。「女性」や「地方創生」には目立った反対はないが、問題は具体的な中身だ。いずれも一筋縄ではいかない難問が待ち構えている。(つづく)
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