国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2006-12-26 23:31

元慰安婦の「償い事業」と「アジア女性基金」

西川 恵  ジャーナリスト
 元慰安婦の「償い事業」に取り組んできた「アジア女性基金」(村山富市理事長)が2007年3月末で解散する。この12年間、韓国、フィリピン、オランダ、台湾の元慰安婦の女性計364人に「償い金」を支給し、医療・福祉支援を行ってきた。「償い金」は国民の募金(5億6500万円)から、医療・福祉支援は政府拠出金(13億円)でまかない、元慰安婦1人1人に総理大臣のお詫びの手紙とともに手渡した。金額にして1人あたり500万円から320万円である。
 
 残念ながら同基金の「償い事業」は、日本人の間でもあまり知られなかった。大きな理由は、同基金が発足時から元慰安婦を支援する市民運動に翻弄されてしまったからだ。これらの運動団体は「日本政府が法的責任を認めて国家による個人補償をすべき」との立場に固執し、当の元慰安婦が何を望んでいるかよりも、過度の倫理主義(「お金で許しを請うのか」「お金より尊厳の回復を」といった論理)に走った。このため事業の輪郭がぼやけ、国民が関心を失ってしまった。

 ただ同基金が行った事業は正当に評価されるべきだろう。オランダでは元慰安婦と認定された79人のうち、受け取りを拒否したのは2人だけ。オランダの支援組織が「受け取るかどうかを決めるのは当事者の元慰安婦の女性であって、私たちではない」というプラグマティックな姿勢を貫いたことが、事業をそれなりに成功に導いた。アジア地域では元慰安婦287人が受け取ったが、同基金はアジアの国別の数字を発表してない。受け取ったと分かると、元慰安婦に圧力がかかるからだ。
 
 したがって287人が元慰安婦の女性全体のどのくらいを占めるか不明だが、同基金の12年は、やろうとして出来たこと、出来なかったことを、腑分けして考える手がかりを与えてくれる。「日本は何もしていない」ということでは決してない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム