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2015-01-11 00:26

(連載2)テロ 「言論の自由」を言う前に武器輸出規制を

中村  仁  元全国紙記者
 不思議なのは、申し合わせたように、美しい「言論の自由」を引き合いにだしたことです。触れられたくない本質的な問題が隠れているからに違いありません。今回のテロリストが使った重火器、さらにイスラム国、イスラム過激派が持つ膨大な兵器、武器はどこから調達したのでしょうか。かれらには製造、生産技術はありません。世界の主要な武器輸出国にはロシア、米、中、仏、英が上位を占めています。イスラム国の兵器、武器の供給国もおなじでしょう。直接調達したもの、イラク軍、シリア軍などから奪いとったものなどが混在してはいます。自衛のため、同盟国支援のため、代理戦争のためなど、いろいろな動機も混在していることでしょう。まさかテロにつかってくれといって、売ったのではないでしょう。

 フランスばかりでなく、米国、英国などでも多くの市民が追悼のために広場に集まり、それぞれ1本のペンを掲げて、抗議しておりました。「テロリストはわれわれのすぐそばにいる。いつ自分たちがテロの犠牲者になるか分らない」という恐怖心が抗議運動の裏側にあるのでしょうね。追悼の市民たちは「政府は武器や兵器をみだりに輸出するな」と、本当は抗議すべきなのです。自分たちが供給した武器で自分たちが銃撃されるなんて、風刺画の世界です。冒頭に「言論の自由をかぶった人種問題」という指摘を紹介しました。特にたくさんの移民労働者を抱える欧州では「イスラム系と白人系の経済格差」が社会構造の重大問題になっています。底辺にいるイスラム系若者の不満は充満しており、多くの若者が志願してイスラム国に戦闘員として移住しています。その一部が本国に戻り、テロを各国でおこしているのです。自分たちが生み出したもので、自分たちが苦しめられるという循環です。

 追悼集会の市民は「テロをなくせ、格差をなくせ」と叫ばなければいけません。もっとも格差をなくそうとすれば、自分たちの雇用や所得が失われることになりますから、そう叫ぶひとはまずいません。格差問題を扱った「21世紀の資本論」という巨大な労作が、グローバリゼーションとマネー市場化のなかで格差が広がっていることを歴史的に分析しました。著者はピケッティ氏でフランスの経済学者です。フランス人は読んでみたらどうでしょうか。現代社会が生みだしている社会格差がまた、テロを生み出す温床になるという循環です。

 事件の発端は風刺画です。風刺にも節度が必要です。とくにイスラム関係などを風刺すると、すぐに政治、社会問題化してしまう傾向が強まっています。冷笑主義はフランス文化の象徴のひとつでしょう。「それを守れ」といったところで、イスラム国、過激原理主義圏では、言論の自由民主主義もありませんから、かれらには通用しません。風刺画の新聞が自分たちの命を危険にさらす。節度と生命のどちらをとるかという問題でもあるのですね。(おわり)
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