国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-07-03 11:49

(連載2)集団的自衛権が行使できても米艦防護が違法となる場合がある

桜井 宏之  軍事問題研究会代表
 なぜならこれを可能にするとして新設される自衛隊法第95条の2(米軍等の部隊の武器等の防護のための武器の使用)は、「自衛隊法第95条によるものと同様の極めて受動的かつ限定的な必要最小限の「武器の使用」を自衛隊が行うことができる」(昨年の集団的自衛権容認の閣議決定)ことを目的として作られているからです。自衛隊法第95条に基づく武器等防護のための武器の使用は警察権の行使に該当します(「行動法規講義資料2010年」(海自幹部学校第3研究室)26頁)。従って閣議決定が「自衛隊法第95条によるものと同様」と言っていることからも、この米軍等武器等防護武器使用も警察権の行使に該当することになります。

 この条項に基づいて自衛艦が米艦を守るため他国軍艦あるいは軍用機に反撃した場合、国際法違反となります(ただし相手が非国家主体であれば問題なし)。なぜなら国際法上、軍隊は主権免除の対象になるため、他国の警察権が及ばないからです。

 この点については第2次安保法制懇報告書も、「本来は集団的自衛権の行使の対象となるべき事例について、個別的自衛権や警察権を我が国独自の考え方で『拡張』して説明することは、国際法違反のおそれがある」(23頁)と釘を刺していたにも関わらず、なぜこのような法整備になったのか不思議です。

 今回政府が提出した安保関連法案は、合憲か違憲かで観点で議論されるばかりで、国際法上の問題点が見落とされています。憲法違反は国内問題で済みますが、国際法違反は国際問題に発展します。国際法上合法か否かについてもチェックしないと将来に禍根を残すことになるでしょう。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム