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2015-07-08 06:09

「抜き打ち」の後は、安倍が「バカヤロウ解散」か?

杉浦 正章  政治評論家
 永田町の政治部OBの飲み会で大笑いとなった解散話。「抜き打ち解散の後は、バカヤロウ解散がある」というのだ。その筋書きというのは安保法制の特別委員会で民主党幹事長・枝野幸男に詰め寄られた安倍が、つい普段から枝野に対して心から思っていることをつぶやいてしまったのだ。何と「バカヤロウ」とつぶやいたのだ。これをマイクが拾って大騒ぎとなって、解散へと突入する。まるで吉田茂の「バカヤロウ解散」とそっくりのシナリオだ。吉田の場合1953年2月28日の衆議院予算委員会で、社会党右派の西村栄一との質疑応答中、西村に対して「バカヤロー」と暴言を吐いたことがきっかけとなって、前年の「抜き打ち解散」からわずか165日で衆議院が解散となった。これは「バカヤロウ解散」と呼ばれる。吉田は衆院予算委で席に着きつつ非常に小さな声で「ばかやろう」とつぶやいただけだが、それを偶然マイクが拾い、気づいた西村が聞き咎めたために大騒ぎとなった。筆者を含めた政治部OBらは「辻元清美に『早くしろ』とヤジった安倍だから、絶対にやる」ということで一致、爆笑でお開きになった。

 笑い話はともかくとして、与野党激突の“摩擦”は、必ず「解散風」につながるのが常だ。こんどはそれが民主党から流れ始めた。昨年9月に年末解散を予想し、まぐれ当たりに当たった枝野が、まことしやかに周辺に漏らしたのが9月解散だ。その後民主党代表・岡田克也が7月3日の記者会見で「今の国会情勢をみると、早期の衆院解散も全くないとはいえない状況だ」と述べたかと思うと、今度は菅直人だ。4日のブログで「政局にきな臭さが漂ってきた。安倍総理は前回の解散で、追い込まれる前に逆襲することに味をしめている。安保法案が行き詰まったら正面突破を図るために解散するのではないか、という憶測が永田町に流れ始めた」と書いたのだ。自分で憶測を流しておいて、「流れ始めた」もないものだが、さっそく2チャンネルで「 お前が言うなら、恐らくハズレだ」と切り込まれている。いずれも根拠のない話ばかりだが、ここにきて解散説が流れる背景には政権サイドからの“脅し”も作用している。というのは政治のプロなら誰もが「怪しい」とみられる動きを2日夜に官邸がしたからだ。この安保国会の真っ最中に安倍を中心に幹事長・谷垣禎一、選対委員長・ 茂木敏充らが2時間に渡って「参院選の」情勢分析を行ったのだ。

 安倍は国会便覧を片手に参院の情勢や候補者調整の進み具合などを茂木らに質問、分析を進めた。もちろん衆院の分析などは出なかったと言うが、参院選との関連で衆院のどこが弱いなどの話が出た可能性はある。おそらく対野党のけん制の意味を込めた会合であろうが、意図的に「解散風」を流して自民党内を引き締め、政権基盤を強固にする“意図”があってもおかしくない。筆者は昨年末の解散は「ない」と断言して、大間違いに間違ったから、今度は予想をするのが“怖い”のだが、とりわけ安倍の解散へのハードルが普通の首相より低いことが分かったから、下手な予想は出来ないのだが、しかし、おそるおそる予想すれば、やはり8月解散や9月解散は「ない」だろう。こういう政局の話は、政治記者の場合、直感がまず働いて判断を決めるのであり、冴えた動物本能が一番大事だ。理屈は後から貨車で来る。その貨車の中身を言えば、半年で解散は、いかにも早すぎて、恣意的だ。それに安保法制をテーマに選挙をするには、国民の間に理解が進んでいない。したがって与党に不利となる。60年安保の例では半年後に池田勇人が解散して勝っているが、少なくとも半年はほとぼりを冷まし、国民が納得するのを待たざるを得まい。朝日など反安倍メディアは、安保改定の時と同様に安倍内閣の退陣と総選挙を要求する可能性があるが、それにまんまと引っ張られる安倍でもあるまい。

 それよりも、政権担当者の胸中を推し量れば、「参院での過半数」だろう。参院で自民党は現在114議席を占めているが、過半数の122議席まであと8議席だ。場合によっては改憲勢力で3分の2の多数も夢ではない。これを確実なものにするのは衆参ダブル選挙しかあるまい。もし安倍がダブル選挙で勝てば、5回の衆参選挙で勝利を占めた首相となり、過去にこのような例は皆無だ。かつて自民党はダブルに勝った中曽根康弘の任期をご褒美として1年延長したが、安倍も2018年9月までの任期を2020年のオリンピック以降まで2年間延長する“権利”を有するだろう。そうすればオリンピックは安倍の手で行えることになる。したがって長期政権の戦略としては、ダブル選挙が現在のところ本命であり、今流れている解散は「真夏の夜の幽霊」にすぎない。 
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