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2015-07-18 02:34

(連載5)安保法制:パーセプション・ゲームの功罪

三浦 瑠麗  国際政治学者
 このように見ていくと、与野党は安全保障上の脅威に具体的に対応するというより、象徴性をめぐるパーセプション・ゲームを戦っています。このような国内政治的な駆け引きに対して冷めた見方をする向きもあるけれど、ある程度はしょうがないでしょう。政争は水際までという理想を持つことは重要だけれど、安全保障政策がとことん政治化されてきた日本の政治風土の下では一朝一夕には実現しないでしょうから。今回の維新の対案提出を日本における安全保障論儀の成熟に向けた画期とするならば、そもそも安全保障論議の成熟とは何か、イメージを共有することが大事でしょう。

 安全保障論議の成熟のためには、政策の前提となる国家のアイデンティティーについて、ある程度のコンセンサスを得ることが重要です。最低限の知識と価値観を共有する議員が与野党双方に存在し、お互いに信頼感を持つような状態になければ、行政府は立法府を信用しません。そうでないと、政策はどうしても「よらしむべし、知らしむべからず」になってしまいます。

 例えば、「日本は平和国家として好戦的政策や、挑発行為には加わらないけれど、国防の備えは十分に行い、自衛隊の練度を維持しながら、日米同盟を機能させるための努力を継続的に行う」ということです。文字にすると当たり前のことと思うけれど、この程度のことさえ長らく共有できてこなかったのだから、そこからはじめるべきなのです。

 そのような土台ができたならば、対外的な脅威の中身や、同盟の役割分担や、自衛隊の装備や、自衛隊員の待遇とケアの問題や、外交上の大戦略や、個別国との緊張緩和に向けた取り組みについて議論してほしいと思います。そうすることで初めて、安全保障と民主主義を両立していくという成熟国が抱える永遠の課題を解く舞台に乗ってくるのだろうと思います。(おわり)
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