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2015-09-01 10:42

(連載2)安保法制の論点:国際平和共同対処事態

緒方林太郎  衆議院議員(民主党)
 ここまで前提を述べた上で、法律に基づいて、どんな決議が入るのかということを見ていきたいと思います。基本的に赤嶺政賢議員の質疑で明らかになったものです。まず、次のいずれかの国際連合の総会又は安全保障理事会の決議が存在することが必要です。(1)国際社会の平和及び安全を脅かす事態に対処するための活動を行うことを決定し、要請し、勧告し、又は認める決議。(2)上記(1)に掲げるもののほか、当該事態が平和に対する脅威又は平和の破壊であるとの認識を示すとともに、当該事態に関連して国際連合加盟国の取組を求める決議。

 以下は、赤嶺議員への答弁(→部分は緒方補足)です。(1)の「決定する」とは、1999年に採択された安保理決議1244が、コソボ紛争の収束後、コソボにおいて、国連の傘下で国際的な文民、軍事プレゼンスが展開することを決定したケース(→これは武力行使ではありません)。(1)の「要請する」とは、2011年に採択された安保理決議1973が、加盟国に対して、リビアに対する武器禁輸措置を徹底するため、同国を出入りする船舶、航空機に対する検査を要請したケース(→これは武力行使を容認しています。また、ソマリア海賊対処やイラク特措法の根拠決議(決議1483)も入ります)。(1)の「勧告する」とは、1950年に採択された安保理決議83が、北朝鮮による韓国に対する武力攻撃に関し、国連加盟国がこれを撃退し、地域における国際の平和及び安全を回復するために必要な支援を韓国に供与することを勧告したケース。(1)の「認める」とは、1990年に採択されました安保理決議678が、イラクによるクウェート侵攻に関し、関連安保理決議の実施及び平和の回復のために、加盟国に対して、武力の行使を含む必要なあらゆる措置をとることを認めたケース(→これは武力行使を容認しています)です。

 (2)は、2001年9月11日、ニューヨーク、ワシントンDC、ペンシルバニアで発生したテロ攻撃について、安保理決議1368が、国際の平和及び安全に対する脅威であると認めるとし、国際社会に対してテロ行為を防止し抑止するための一層の努力を求めたケース(→個別的自衛権、集団的自衛権(NATO)の根拠となる規定です)です。

 ここまでで分かることは、安倍総理は、イラク戦争や湾岸戦争に戦闘目的では行かないと言っているけど、実際には「戦闘目的ではない後方支援」には行くということです。その是非については問いませんが、「イラク戦争や湾岸戦争には、その形態がどのようなものであれ行かない」という誤解を与えるような答弁をするのは宜しくないと思います。「戦闘目的では行かないけど、後方支援目的なら行くことがあり得る」と答弁すべきでした。(つづく)
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