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2015-09-10 11:30

(連載2)中国外洋艦隊の萌芽

牛島 薫 団体職員
 故に、当然この2本の線を基準に中国は自国の制海権を拡大したいわけだが、長らく中国にとって第一列島線すら近いようで非常に遠いラインであった。なぜかを理解する上で大事なのは、中国大陸本土からの距離である。人民解放軍にとって、近ければ近いほど地上軍からの支援を手厚く得ることができる艦隊は戦いやすく、遠ければ遠いほど艦隊の純粋な戦力が試される。つまり、当たり前だが、(1)沿岸、(2)第一列島線、(3)第二列島線と勢力を拡大するにつれて中国海軍の艦隊は進歩していることになる。語弊を恐れず端的に区別すれば、上記に対応して(1)「沿岸艦隊」、(2)「要塞艦隊」、(3)「外洋艦隊」と進歩していくのである。



 (1)というのは端的には本土の領海への侵入を防ぐのに精いっぱいで外洋に出て戦闘することが困難な戦力の形態である。(2)とは、陸上からの強力な支援を得て敵艦隊が領土領海に直接攻撃できない距離まで追い出すことができる戦力の形態で、一般的には(1)と(2)をまとめて地域海軍という。(3)は読んで字のごとく、アメリカやイギリスといった、世界中いたるところで長期間十分な海上戦闘ができる戦力でそういう戦力をもつ組織は外洋海軍と呼ばれる。



 いま、中国海軍がどのあたりにいるのかといえば、(2)になりかけている(1)であろう。かつて中国海軍司令員であった劉華清が1985年に海洋権益の確保のために「外洋艦隊」を持たねばならないとし、まずは「沿岸艦隊」を卒業することを目標に掲げた。それ以来、長年邁進してきたのが(2)第一列島線の制海権確立である。



 だが、第一列島線には、当然世界最大の「外洋艦隊」を有する米国の第7艦隊が睨みを利かせている。ここで制海権を確保するのは並一通りではない。中国はそのために高度な外洋型艦船を多く建造し、またシーレーン防衛に積極参加したり海外基地を建設したりして外洋活動能力の向上に努めてきた。そして、それと両輪で進めてきたのが、上記の大陸間弾道弾をはじめとした中長距離弾道ミサイルの開発である。(つづく)
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