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2015-09-11 11:03

(連載3)中国外洋艦隊の萌芽

牛島 薫 団体職員
 特にDF‐21を始めとした対艦ミサイルは中国本土(もしくは戦闘機、艦船など)から超高速で外洋展開中の米空母打撃群に有効な攻撃を加えることができるように将来的にはなるだろう。これらのミサイルは今のところ米軍にとってクリティカルな脅威ではないとされるが、ミサイル防衛は防御側に多大なリソースを要求するため米空母打撃群にとってかなりのストレスになり、中国海軍に行動の余裕を与える。これがすなわち味方の要塞砲から支援射撃と前線部隊がセットのごとく機能する(2)「要塞艦隊」である。



 これは地域海軍としての最後の段階であり、順調に中国が海軍力整備を継続することができれば2015年以降確実にそのステージの実力はつけると予想され、そのための軍備拡張を中国は抜かりなく行っている。既に、防衛省の対中紛争のシミュレーションによって自衛隊単独で尖閣諸島を維持するのは短期的にすら不可能なのが明らかになっている。近い将来、日米連携の隙を突き尖閣諸島などにおける低強度紛争を首尾よく運ぶことができれば、「要塞艦隊」が第一列島線域内の制海権を確立し、A2/ADの最初の成功例とするのも不可能ではなくなりつつあるのである。そして少なくとも中国が「外洋艦隊」を以って世界の海軍大国の一角に名乗りを上げる日が来るのはそう遠い先の話ではない。



 中国共産党は常に長期的な視野で軍備管理をし、実現するかなり前からその野心の片鱗を隠さないのが癖で、近年も艦載機も飛ばないうちから練習空母を堂々と購入するなど「中国之夢的戦略」の「予告」を欠かさない。そういう視点から上記の軍事パレードを見ていたため第五世代戦闘機J‐20などが顔を出さなかったのにはひとまず胸を撫で下ろした。



 だが、他方、返す手で中国海軍の巡洋艦数隻が北太平洋のアラスカ州領海に顔を出したのは、なかなか示唆的である。北京政府は、すでに第一列島線を超えることは夢ではなく来るべき現実であり外洋海軍を以って第二列島線まで第7艦隊を後退させるという強い決意表明を日本の頭越しに米国大統領に向かってしたように思えるからである。中国外洋艦隊の萌芽を我々は今、目にしているのである。(おわり)
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