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2015-10-29 13:53

英中“黄金時代”:“二つの顔”を持つイギリス

倉西 雅子  政治学者
 イギリスを国賓として訪問していた習近平主席は、エリザベス女王夫妻主催の歓迎式典をはじめ、破格の待遇を以って迎えられたそうです。その背景には、英中双方の経済的な思惑の一致があるようです。

 習主席の訪英は、英中“黄金時代”の始まりとも称されていますが、国際社会における中国の暴力主義的な振る舞いを考慮すれば、イギリスの対中接近には失望の声も上がっています。イギリス国民も歓迎一色ではないようです。イギリスと言えば、立憲主義や議会制民主主義の発祥の地であり、かつ、自由主義経済の先導役をも務めてきました。そして、洗練された礼儀、マナー、文化を大事にしてきた紳士淑女の国でもあります。一方、中国は、暴力革命で成立した共産主義一党独裁体制を堅持しており、経済面においても、改革開放路線を採用しつつも、習政権下では“国家独占資本主義的”な側面を強めています。このことから、一見、イギリスと中国は水と油のようなものであり、英中接近は意外な印象を受けます。

 しかしながら、イギリスには、“二つの顔”があることに思い至りますと、英中接近も理解に難くはありません。イギリス外交は“二枚舌”でも知られておりますので、“二つの顔”も尤もなのですが、イギリスには、マグナ・カルタにも象徴される、中世以来の民主主義、法の支配、権利・自由の保障、権力分立…といった自由主義的な系譜がある一方で、17世紀以降、大ブリテン島に渡ってきたユーラシアン系の人々によって全体主義的な系譜が持ち込まれているようにも思えます。ユーラシアン系の思想とは、おそらく、金融界を牛耳ってきたユダヤ人の思想を核としているのでしょうが、基本的には、遊牧民系(移動民…)の思想であり、国民の管理と統制を是とするものです。ユーラシアン系の思想は、カール・マルクスの共産主義に色濃く出ていますし、ジョージ・オーウェルが『1984年』を執筆したのも不思議ではなくなります。イギリスの金融界は、大富豪にしてユダヤ系貴族出身のアイヴァー・モンタギューが“ピンポン外交”で名を馳せつつ、ソ連邦のスパイであったように(ヴェノナ・ファイルで判明…)、国際共産主義とも密接な結びつきがあります。そして、大英帝国の建設が、世界大に広がっていたユーラシアン系、あるいは、ユダヤ系の人脈と資金に支えられていたとしますと、イギリスの二面性は、帝国化の代償であったとも言えるのです。

 既に大英帝国の全盛期は過ぎ去ってはいるものの、イギリスの二面性は、パレスチナ紛争をはじめ、時にして国際社会に解決困難な問題や悲劇をもたらしてきました。近年の急速な英中接近は、議会での討論を経たというよりも、オズボーン財務大臣の意向が強く働いたと指摘されていますが、今日のイギリスが、ユーラシアン系優位にあることを示しているようにも思えるのです。
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