国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2015-11-30 15:34

EU初の集団的自衛権行使から見る日本国の課題

倉西 雅子  政治学者
 アメリカが攻撃された2011年9月11日の同時多発テロに際して、NATOは、いち早く集団的自衛権の発動を決定し、アメリカと共にテロ組織と闘う決意を示しました。今月13日にフランスのパリ起きた同時多発テロでも、EU初の集団的自衛権の行使が表明されています。

 EUの集団的自衛権は、1948年3月17日にベルギー、フランス、ルクセンブルク、オランダ、及び、イギリスの西欧五カ国によって締結されたブリュッセル条約に起源を求めることができます。当条約の第4条では(改正ブリュッセル条約では第5条)、何れかの締約国が攻撃を受けた場合、他の締約国は、個別的、または、集団的自衛権を明記する国連憲章第51条に従って軍事的、並びに、その他の支援を行うべきものと定めています。その後、当条約を基礎にブリュッセル条約機構(西欧同盟:WEU)も創設されますが、NATOに隠れて長らく陰が薄く、いわば、NATOと並行して併存する補完的な存在として存続してきました。このWEUが、2009年のリスボン条約の発効に伴ってEUに継承されたため、EUは、集団的自衛体制の枠組みをも兼ねることとなったのです。

 今日、国境を越えて広がるテロの脅威に対しては、一国で対応することは不可能であり、特に、イスラム過激派テロ組織がヨーロッパ大のネットワークを形成している以上、国際協力なくしてテロを取り締まることはできません。今般のテロ事件を計画して実行した犯行グループは、ベルギーを拠点としていたとも報じられております。それでは、仮に、日本国内で外国のテロ組織のメンバーが事件を起こした場合、どの程度の国際協力が可能なのでしょうか。集団的自衛権の行使に反対している左派の人々は、ISとの戦いへの自衛隊の参加にも、アメリカの戦争に巻き込まれ、日本人がテロの攻撃対象となるとして反対しております。しかしながら、反対派の人々は、テロとの戦いに集団的自衛権が行使されている現実を、どのように捉えているのでしょうか。国際的テロ集団はISに限られるわけではなく、現実には、日本国を標的に含める、あるいは、攻撃対象と定めている他の過激宗教・思想集団や同一のアイデンティティ-で繋がる暴力主義集団は多数存在しています。

 今日のハイブリット型の戦争形態を考慮しますと、この分野における日米同盟、並びに、国際協力は手薄なように思えます。今般の集団的自衛権の行使に関する議論では、軍事行動や平和維持活動が中心となりましたが、今後は、ISを含む多様なテロ集団が存在することを想定した上で、国際的な協力体制を強化する必要があるのではないでしょうか。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム