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2016-01-08 18:11

北朝鮮水爆実験:面目が潰れたのは中国?

倉西 雅子  政治学者
 1月6日午前10時頃、日本国の気象庁によると、北朝鮮北東部においてマグニチュード5.1の揺れが観測されたそうです。その後、北朝鮮では、水爆実験の成功を伝える政府声明が発表されています。

 北朝鮮は、厚いベールに覆われた秘密主義の国であり、政府当局が真意を語ることはめったにない国です。政府声明では、水爆実験の目的はアメリカの対北敵視政策や核の脅威と説明する一方で、メディアなどでは、金正恩氏の誕生日を控えた国威発揚のためとの見方も示されています。真の目的は深い闇に包まれています。しかしながら、一つだけ言えることは、北朝鮮の水爆実験で面目が潰れたのは中国ではないか、ということです。これまで北朝鮮が、国連決議に基づく経済制裁を受けながら、国家として生き延びてきた背景には、中国による隠れた支援が指摘されています。中国は、国際社会から“制裁逃れ”の加担者とする批判を受けつつも、朝鮮半島特有の地政学上の理由から北朝鮮の“後ろ盾”となってきたのです。

 こうした中、北朝鮮が水爆実験に及んだとなりますと、第一に、中国は、北朝鮮に対する“監督不行き届き”の非難を免れ得ません。北朝鮮が暴走すれば、“後見国”にもその責は及びます。第二に、最大の支援国でありながら、中国が北朝鮮の水爆実験を事前に制止できなかったとしますと、中国の北朝鮮に対する影響力は然程ではないことになります。つまり、地域のパワーとしての中国の力量に疑いが生じ、アジアにおけるプレゼンスが低下するのです(北朝鮮が、中国からロシアに乗り換えた可能性も…)。そして第三に、水爆実験の黒幕が中国であったとしますと、中国は、核保有国でありながら核拡散に手を染めたわけですから、当然に、NPT違反国となります。水爆実験には、原爆とは桁違いの資金と高度な技術を要するとされていますので、北朝鮮単独開発とは考え難く、北朝鮮に対してこの両者を提供できる国があるとすれば、最も可能性が高いのは中国です。となれば、国際社会は、制裁対象国に、北朝鮮のみならず、中国をも含める展開も予測されるのです。

 北朝鮮の水爆実験を受けて、緊急の国連安保理が召集されていますが、果たして中国は、どのような立場を示すのでしょうか。北朝鮮の水爆問題は、その背後の闇をも明かすことになるのでしょうか。
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