国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2016-03-03 19:11

世界の軍事力について

真田 幸光  大学教員
 世界に於いて権威のある「英国際戦略研究所」は、世界171か国・地域の軍事力を分析した「ミリタリー・バランス2016年版」を発表しました。今回はその内容を引用させて戴きます。これによると、「中国本土やロシアによる高度な軍事技術の開発、配備によって、軍事技術による西側の優位が徐々に失われ、世界の軍事バランスが変化している。」との主旨の指摘がなされています。即ち、この報告書では、「中露は高度な新技術を使用した弾道ミサイルや巡航ミサイル、装甲戦闘車両などを導入している。そして、ロシアは実際に、シリア空爆で巡航ミサイルを使用してもいる。中国本土は、独自開発した兵器のアフリカへの輸出を強化しており、ナイジェリアにはドローンも輸出している。」と言った報告がなされています。更に、「中国本土の2015年の軍事費は、前年対比10.1%増の1,458億米ドルとなっており、米国に次ぐ世界2位、この結果、世界の軍事費の9.3%を占めるに至った。ロシアはサウジアラビアに次ぐ4位となる656億米ドルで、国内総生産(GDP)の5.4%を占めている。」とも報告されています。

 また、切り口を変えて、この報告書の内容を引用すると、「中国本土は、アジア・オセアニア地域の国防支出に占める割合は2015年には41%となり、日本はアジアの11.5%に低下した。」と報告されており、南シナ海などで覇権強化が進む中国本土との差が一層広まっていると言った見方、懸念も出てきています。そして、シリアのアサド政権を支持して軍事的展開をしているロシアも軍の近代化を進めていることから、上述したように、「中露の軍備増強」に対する警戒感が強まっていると言えましょう。

 そして、最も多かった国防費支出国は米国であるものの、2010年には世界全体の47%を占めていた比率が、2015年には38.3%まで下がっていることが報告されています。しかし、5,975億米ドルに達する米国に対して、2位の中国本土は、1,458億米ドルであり、その差は依然として大きいとも言えます。更に、イスラム教スンニ派過激組織「IS」対策などからサウジアラビアが前年に続いて819億米ドルで3位となっている点も特徴でありましょう。また、アジアの国防予算は2010年以降、名目で4分の1以上増え、2014年の総額3,220億米ドルから2015年は3,400億米ドル以上になっています。

 最後に、この報告書は、「中国本土の海洋進出への対応を迫られるアジア太平洋地域で海軍力の増強が進められ、ほとんどの国が過去5年間に海上兵器購入などで支出が拡大している。」と指摘している点も、日本人としては、注視しなくてはならないと思います。いずれにしても、こうした内容から見ると、世界の軍事バランスには微妙な変化が生じていると見ておきたいと思います。こうした中で、平和憲法を持つ日本はどのように考え、動くのか、憲法改正論議も含めて、国民一人一人がしっかりとした議論をしていく時が来ていると思います。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム