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2016-10-07 15:20

北朝鮮の核武装化拡大に揺れる韓国について

真田 幸光  大学教員
 米国や中国本土などの報道を見ていると、私は、「米中は、北朝鮮は諸外国からの軍事的先制攻撃を受けにくい核抑止力を持ったと認識している」と見ています。そうした意味では、「北朝鮮の脅威は一段階高まった」とも認識しておくべきかとも考えています。そして、こうした、「北朝鮮の脅威の高まり」を受けて、韓国には動揺が見られているとも考えられます。例えば、即ち、韓国の世論調査機関である韓国ギャラップは、「北朝鮮による5度目の核実験を受けて、韓国では58%の人が自国の核保有に賛成している」とする調査結果を発表しています(因みに核保有反対は34%)。本年1月の北朝鮮の4度目の核実験直後の調査では、全体で54%の人が核保有に賛成し、38%が反対しており、更に核保有賛成派が増えている状況が垣間見られます。また今回、20代の55%は韓国の核保有に反対するとしたが、50歳以上の75%は核保有に賛成したという点が特筆されています。また、与党・セヌリ党支持者の75%が核保有を賛成しており、野党も「共に民主党」支持者の50%、「国民の党」支持者の58%がそれぞれ賛成しています。尚、こうした韓国国内の核武装論の高まりに関して言えば、米国の大統領候補であるトランプ氏の発言も少なからず、影響しているとも思われます。

 また、北朝鮮に対する感情も悪化しているようです。今回の5度目の核実験が朝鮮半島の平和に対する脅威であると回答する人は全体の75%に達しています。北朝鮮の咸鏡道で起きている大規模な水害を巡っても、北朝鮮の要請があれば支援すべきだと答えた人は40%に留まったのに対して、支援すべきでないとした人は55%にのぼっており、韓国人の北朝鮮に対する感情の悪化も見られています。

 こうした状況を受けてか、韓国の尹外相は、先月行った国連の一般討論演説で北朝鮮の核と弾道ミサイルの開発について、「最終段階に来ている」と述べたうえで、北朝鮮に対する厳しい制裁措置を含む新たな国連安全保障理事会決議の必要性を訴えていました。即ち、尹外相は演説で、北朝鮮による5回目の核実験が従来の3年周期から僅か8カ月で実施されたことや、弾道ミサイルも今年だけで22発発射していることなどを説明しており、更に、北朝鮮は核兵器で韓国をわずか4~5分で攻撃できるとの見方も示し、韓国国内で高まる危機感を訴えていました。そして、国連安保理の制裁決議についても、「これまでの決議の隙間を埋め、内容も拡大・強化しなければならない」と強調しています。更に、北朝鮮がこれまでも国連決議に繰り返し違反していることにも言及しつつ、「多くの国家がすでに疑問を提起しているように、北朝鮮が平和を愛する国連加盟国としての資格があるかどうか、深刻に再考してみなければならない時となっていると思う」とも語り、「北朝鮮の国連加盟資格」についてまで言及した点は注目しなければならないと思います。

 こうした一方、韓国政府は、大統領府で開いた政策点検会議で対北朝鮮政策の見直しを行っています。朴政権は従来、北朝鮮政策については、「対話や周辺国との協力を重視する政策」を掲げてきていましたが、これが事実上破綻し、現在は制裁と軍事的圧力を重視する政策を打ち出しているとも言えます。北朝鮮情勢に伴う韓国の動揺は深まっていると見ておきたいと思います。
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