国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-03-15 10:56

中国経済の“偽装自由化”は店仕舞いか?

倉西 雅子  政治学者
 今年の中国全人代は、習近平国家主席への権限集中が顕著となり、李克強首相との権力争いにも決着が付いた感が否めません。李首相が主導してきた“リコノミクス”が終焉を迎え、“シーコノミクス”の時代に移ったとも評されています。

 “シーコノミクス”の具体的な内容は不明瞭ですが、報道に拠りますと、携帯料金の一部無償化案に対して拍手が鳴り止まない一幕があったそうです。国民生活の向上を目指すとする今大会の方針に沿った政策の一環なのでしょうが、敢えて情報通信分野に的を絞った無償化政策を打ち出し、全人代がこぞって賛意を表明したことには、“シーコノミクス”の政策方針が透けて見えます。

 情報通信分野と言えば、13億の巨大市場を背景に、近年では、米IT企業とも協力関係にあると共に、グローバル経済を象徴する分野でもあります。この分野において、一部とはいえ無償化を実施する意図には、習政権に対して不満を燻らせている国民に対する“懐柔”に留まらず、全世界に向けたメッセージが込められているように思えます。それは、“シーコノミクス”の目指すところは、国家による情報通信分野の掌握であり、共産党による経済・社会両面における統制の強化です。言い換えますと、政府系ゾンビ企業の退治に積極的に取り組んできた“リコノミクス”が退場し、今後の中国経済は、“シーコノミクス”の下で統制型に逆戻りする可能性が高いのです。情報通信分野では、政府が既に“価格決定権”を握っているのですから。

 さらに懸念すべきは、統制経済が国内に留まっていた改革開放路線以前とは異なり、今般の“シーコノミクス”は、“グローバリズム”を中国の国策と結びつけていることです。今後とも、国家のあらゆる資源を動員することで、一帯一路構想の下で中国中心の経済圏構築に邁進することでしょう。となりますと、対中批判を繰り返してきたアメリカのトランプ政権との衝突は、近い将来、政経両面において不可避となるかもしれません。中国は、80年代にあっては、政治分野における“偽装民主化”によって、中国国民、並びに、アメリカをはじめ国際社会を騙し、天安門事件まで引き起こしています。軍事大国化に必要な技術やノウハウを手中に収めた今日、中国は、遂に、経済分野における“偽装自由化”をも店仕舞いし、共産党、否、スターリン主義に類する個人独裁体制という真の姿を見せ始めているように思えるのです。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム