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2017-03-24 10:56

(連載2)キプロスから見た諸問題

緒方 林太郎  衆議院議員(民進党)
 国連ではPKO改革のためのハイレベル・パネルが2014年に報告書を出していて、その中に「a number of peace operations today are deployed in an environment where there is little or no peace to keep(今日、多くのPKOが、維持すべき平和がほとんどないか全くない環境において派遣されている)」という表現が出てきました。これが実態だと思います。国連側は、「能力が変化に追いついていない」、「政治的サポート不足」、「求められることと出来ることの差が大きい」、「国連の官僚主義の弊害」といったような指摘をしています。非常にザクッと言うと「何でもかんでもPKOに持ち込まないでほしい」という魂の叫びではないかと思います。

 日本はこういう問題意識を主導していくべきではないかと思ったので、それをそのまま聞きました。本当に真面目に「国連PKOで何をすべきなのか」、「そして、その中で日本はどういうPKOに参加すべきなのか」という議論をすべきだと思います。

 最後に、キプロスで行われたベイルインについて質問しました。これは何かと言うと、金融機関の破綻に際して、金融機関の株主、預金者等が負担をする制度です。かつての日本の金融危機の際はベイルイン法制が整えられていなかったので、ベイルアウト(公的救済)で税の投入がなされていますが、世界の趨勢はベイルインです。そして、ギリシャ危機の際、ギリシャ国債を持っていたキプロスの金融機関ではEUによってベイルインが採用されました。何故、ベイルインを採用したのかについては色々な議論がありますが、「一度、実験的に小さい国でやってみようとEUが思った」とか、「ロシアからの資金が流れ込んでおり、そんなものをEU国民の税で救済する必要はないと判断した」とか言われています。いずれにせよ、当時のキプロスの経験で明らかになった事があります。切っていく株式、債券の順番をどうするかを間違えると中小企業や個人の預金者がとてつもなく損害を被る事があるでしょう。そういう経験をきちんと踏まえるべきとの示唆をしました。実際、EUはキプロスでの経験をベースにベイルイン法制を整えてきています。

 日本でもベイルイン法制は預金保険法第126条の2において整えられている事になっています。しかし、とてもザックリ書いてあります。しかも、基本的には日本の倒産法制を下敷きにしており、これだけでは金融機関破綻の際に何が起こるのかがさっぱり分かりません。個人預金者に対する優先弁済権も確保されているようには見えませんし、破綻した際にベイルインする債務の準備(gone concern loss absorbing capacity)も進んでいるようには見えません。「対応に幅を持たせている」と言えばそれまでですが、もう少し本件はよく勉強していきたいと思っています。(おわり)
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