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2017-07-28 10:01

(連載2)外務委員会質疑(日印原子力協定)

緒方 林太郎  衆議院議員(民進党)
 この条約には「陰の主役」が居ます。それはパキスタンです。インドが将来的に核実験をする可能性があるのは、「パキスタンがやった時」です。その時は必ず、インドもやると思います。つまり、トリガーを引くのはパキスタンです。その時、インドは何というかと言うと「自分達には何の責任もない。モラトリアムだって続けていく意思を持っている。ただ、今回は主権への危機だからやらざるを得なかった」と、こういう言い方になるはずです。ただ、日本は如何なる状況であろうとも、核実験をやったら協力を止めるという立場を表明しています。

 では、その時の規定はどうなっているかと言うと、日印原子力協定14条第2項に明記されていますが、右協定にある「考慮」を払ったとしても、日本のポジションは「必ず協力を止める」というものです。ただ、それであれば、こんな考慮規定は要らないわけです。考慮規定があるというのは、考慮した後、結果が左右される可能性を示唆しているのではないかなと思うわけです。そこを聞きました。「協力を止めるという日本の立場はインドも理解している」との答弁でしたが、この「理解」も、インドとしては「日本がそういう主張をしている事を知っている」というだけで、「そうなる」という事までをも合意していないのだろうと思います。

 そして、よく取り上げられる公文ですが、日本はこれを国際約束だとして「核実験をやったら日本が協力を必ず止める」という根拠はここにある、と主張しています。しかし、これは日本とインドがそれぞれの主張をしているだけです。合意と言うからには「意が合っている」必要があります。この公文で「意の合っている」部分は何処ですか、という事を長々と質疑しています。結論から言うと、第二項の「前記については、両国の見解の正確な反映であることが了解される」という部分だけだという答弁がありました。つまり、お互いが言い合ったことが正確に反映されている事が合意事項であり、具体的な義務関係を構成する部分はありません。「核実験を行ったら協力が止まるという事についてインドが合意している」わけではないわけです。

 もう通ったので正直に言うと、「(インドと原子力協力をするかどうかという是非はさておき、交渉をやる事を前提とするならば)あの厄介なインド人相手にここまでやってきたのは立派。あとはパキスタンが核実験をやらない事を皆で願おう」というのが感想です。上記にあれこれ書きましたが、インドの核実験のトリガーを引くのはパキスタンです。なので、パキスタンが核実験をやらなければ、インドは2008年以降のモラトリアムを継続するはずですし、協定第14条の協力の停止の部分は発動されません。なので、もう一度書きますが「パキスタンが核実験をやらない」限りにおいては普通に普通の原子力協力が進むだけだと思います。(おわり)
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