国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2017-08-03 14:26

習近平国家主席の“党主席”復活の狙いとは?

倉西 雅子  政治学者
 今日、中国において、国家組織の最高ポストである国家主席の座にあるは、習近平氏です。その習氏、国家主席では飽き足らず(共産主義では、党が国家を指導し、国家に上位すべきとする認識がある…)、“核心”という称号に加えて、今度は、党主席のポストの復活を提案したと報じられています。

 “党主席”とは、唯一、建国の父とされる毛沢東氏のみが就任し得たポストです。“核心”は、毛沢東氏に加えて鄧小平氏や江沢民氏にも与えられた呼称に過ぎませんので、“党主席”の地位には別格の重みがあります。併せて68歳以上の幹部定年の制度をも変えようとしているところから、その“党主席”の復活を提言した習氏の思惑が、長期独裁体制の樹立であることは言うまでもありません。国家主席や党総書記には2期までとする制限があり、現制度のままでは習主席は、引退せざるを得ないからです。現代における最高レベルの医療を施すことで同氏が100歳まで長生きをするとすれば、中国国民は、終身独裁制の下で30年以上にわたる暗黒の時代を生きることとなりましょう。

 そして、パーソナルカルトを伴う習近平長期独裁体制の成立に加えて、懸念されるのは、中国共産党という組織を世界支配の道具とすることです。かつて、ソ連邦が東側陣営の盟主となり得たのは、全世界の諸国に設立された共産党を陰から動かし、コミンテルンと呼ばれた国際組織で束ねることで、国境を越えた活動を指令することが可能であったからです。乃ち、政党とは、それが国家の枠組を越える時、いとも簡単に内政干渉、あるいは、外国支配の手段となり得るのであり、ソ連邦は、それを実行しているのです。ソ連邦なき今日、最後に残った“共産主義帝国”である中国が、類似する手法で世界支配を狙っても不思議ではありません。日本国内では、蓮舫民進党代表の二重国籍問題が批判を受けましたが、仮に、中国共産党が国籍条項を設けていないとすれば、中国国籍を保有してはいないものの、何処の国でも中国共産党の党籍を有する政治家が存在するかもしれないのです(二重国籍ではないが、極めて危険な存在…)。

 東アジア情勢が緊迫する中、日本国政府は、中国共産党のリスクに対しても、予め対応策を講じておくべきではないでしょうか。中国における習主席を頂点とする長期独裁体制の成立は中国一国の国内問題に留まらず、その際限なき支配欲ゆえに国際法秩序全体を揺るがしかねないのですから。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム