国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-03-29 11:31

連載投稿(1)東アジアのエネルギー資源不足

池尾 愛子  早稲田大学教授
 中国の第10期全国人民代表大会(全人代)第5回会議が3月5日から16日まで開催された。私有財産の保護を強化する物権法を採択し、国家発展改革委員会(NDRC)によってエネルギー価格を国際水準並みに引き上げ調整することも発表された。省エネ実現に向けて市場メカニズムが有効に作用するための環境整備であり、中国にとっては大きな制度改革である。制度の大きな改変は発表から実施までのタイムラグがあると、混乱が生じやすい。混乱を最小限に抑えるためには、正直で誠実な官僚たちが毅然とした態度で事態に対処するなどして活躍する必要があり、そのための環境整備も期待したい。

 3月27日の日本経済新聞によれば、4月中旬の温家宝首相来日時に、都内でエネルギー分野(省エネ、新エネ開発、資源開発など)の協力関係を築くための官民共同会合も開催する調整に入ったとのことである。(体制の相違を「乗り越える」ために)技術的な話を忍耐強く積み重ねられる装置(省エネセンターなど)を設置して、できる限りビジネス・レベルで継続的な取引の合意が形成されていくことが望まれる。

 ところで、韓国は日本と同様にエネルギー資源に乏しい。中国にはエネルギー資源はあるけれど、現在ではその旺盛な需要をまかなうほどの十分な供給は生み出していない。東南アジア諸国連合(ASEAN)をみれば、1990年代半ばに既に原油の純輸入者(ネット・インポーター、域内輸入が域内輸出を上回る状態)であり、2003年からは石油製品の純輸入者となっている。そしてその過半は、サウジアラビアやクウェートなど中東諸国からの輸入に頼っている。

 2006年版『ASEAN統計ポケットブック』はASEAN事務局のウェブサイトから容易に利用可能である(http://www.aseansec.org/19188.htm、表94-97)。1973年の石油ショックの後、日本は国内での天然ガス利用を促進し、中国やASEANにたよって石油やガスの輸入先を多様化し、いったん中東依存を減らすことに成功した。しかし、東アジアの経済成長とともに、中国から日本への石油輸出は2004年以来止まり、ASEANからは日本への石油などの輸出が減少しただけではなく、ASEAN自体が中東依存度を高めている。要するに、東アジア全体がエネルギー資源を中東に頼っており、エネルギー安全保障の観点からはきわめて脆弱な状況が発生しているのである。(6月2日一部訂正)(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム