国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-03-30 11:22

連載投稿(2)東アジアのエネルギー安全保障

池尾 愛子  早稲田大学教授
 こうした事情があるので、国際エネルギー機関(IEA)のアジア版「アジア・エネルギー機関」を設立したとしても、東アジアのエネルギー安全保障は得られないのである(3月27日のある会合の折にも一部の参加者に伝えさせていただいた)。そして、去る2月に発表されたアーミテージとナイの危機管理レポート(25頁)でも、中国(とインド)がIEA自体に加盟することが望ましいとされているのである。

 遡るが、2004年6月に北京で開催されたエネルギー安全保障フォーラムでは、私は主催者から「日本とASEANのエネルギー経済学」をテーマとする発表を依頼され、日本アセアンセンターの方のご教示に頼って、ASEAN事務局のウェブサイトから最新の統計データを入手し、上のような状況を発見して大きなショックを受けた。北京フォーラムでは重要な情報提供になったと思うが、それ以上に、中国のエネルギー需要の伸びの予想のほうが衝撃的であった。繰り返しを含むが、東アジア全体が中東のエネルギー資源に深く依存した状況になっているので、東アジアのエネルギー安全保障は中東(およびマラッカ海峡などタンカー航路)の安全保障に依存しているのである。

 中東の安全保障を考え始め、何から防衛するのかと思い巡らすと、その対象は特定の国があがることもあれば、それ以外の集団があがることもある。安全保障の手段として、伝統的なもの(軍事)のほかに、新たに非伝統的なもの(非軍事)が注目されるようになってきており、伝統的安全保障と非伝統的安全保障の両面から議論して、必要な行動を起こすことが要請されているようである。1月に日本に防衛省が誕生してから、関係する要人の日本訪問が相ついだように思われる。安部首相が1月に北大西洋条約機構(NATO)のブリュッセル本部を訪問しその意思決定機関である北大西洋理事会で講演したことだけではなく、マーティン・エルドマンNATO事務総長補が来日して公開フォーラムで「NATOの変革と日-NATO関係」について講演するなどした(日本国際問題研究所主催、3月8日)ことはかつてない新しい動きである。

 2-3月にいくつかのフォーラムに参加して、日本に防衛省ができたおかげで、海外のカウンターパートたちと伝統的安全保障面だけではなく非伝統的安全保障面での連絡、意見交換、協力も行いやすくなっているように感じられた。そして、NATO自体が(中東などの)エネルギー安全保障をふくむ非伝統的安全保障に大きな関心を示していることと、東欧諸国などかつての敵もメンバーに入れることに成功して自信を持ってたゆまぬ変革をめざしていることが伝わってきた。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム