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2017-11-18 17:02

(連載2)習近平国家主席は“ビッグ・ブラザー”か

倉西 雅子  政治学者
 そして、何よりも、今日の中国と『1984年』との共通点は、その“二重思考”にあります。オセアニア国もまた一党独裁体制なのですが、この政党のスローガンとは、“戦争は平和なり 自由は隷従なり 無知は力なり” の三つです。“二重思考”とは、理性に照らせば矛盾する正反対のものを同時に信じ込む思考方法であり、オセアニア国の国民は、政府の指導によってこの思考の訓練が課せられているのです。

 つまり、理性や論理性を強制力で捻じ曲げる訓練であり、国民に対する思考力の破壊行為と言っても過言ではありません。こうした詐術的な思考方法には、誰もが嫌悪感や反発を抱くものですが(難解で高度な思考方法を装いながら、その実態は、単なる嘘吐きの方便に過ぎない…)、共産主義国を見ますと、まさにこの忌まわしい“二重思考”が観察されています。中国も例外ではなく、平和を主張しながらその一方で軍拡を進める言動や、進歩的国家を目指しながら中華帝国へと回帰する矛盾は、“二重思考”以外のなにものでもないのです。

 同作品は、冷戦期のアメリカにあって、ソ連邦の全体主義の欺瞞と恐怖を余すことなく描き出した反共の教材の役割をも果たしましたが、今日にあって、『1984年』は、中国、並びに、それを背後から支える国際勢力(新自由主義勢力?)の危険性を伝えているように思えます。

 『1984年』の世界では、“思考警察”が国民の“思考犯罪”を取り締まっており、党の思想に反する考えを抱く者に対しては、強制収容所送りといった刑罰が科されます。習近平思想の登場とその学習の強要は、国家が本格的に国民の内面=思考の自由にまで踏み込むディストピアが、まずは現代中国において現実化する前触れなのかもしれません。(おわり)
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