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2018-01-10 16:46

ドイツ情勢と世界について

真田 幸光  大学教員
 私は今年の最大リスクの一つとして、「ドイツの政局不安」から連鎖する、「独仏連携であるメルケロン体制の揺らぎ」と、これに起因して起こる、「EU体制の崩壊リスク」が顕在化し、その結果、「欧州経済の悪化の可能性が高まる」ことが懸念され、具体的には、「欧州株価の下落」とそれに伴う、「先進国株の連鎖下落」に伴う、「先進国株の同時下落」によって、「世界経済に一気に暗雲が広がる」と言う可能性があるという事を懸念しています。

 「EU崩壊」のリスクさえ顕在化しなければ、こうした私のつまらぬ見方などは、「杞憂」に終わり、後には、「ああ、なんとつまらぬことに心配したのであろうか」と思うのでありましょうが、どうしても、今は、「ドイツの政局展開」に注目せざるを得ません。いや、それほど、「まさかドイツの政局が」「何故、すんなりとドイツでは連立政権が成立しないのか」と疑問に思うからであります。ドイツの政治家たちが、冷静に考えれば、「小事を捨て、大局を見つめるべき」であることは自明の理であり、政治家としての思惑はあっても、すんなりと連立政権が樹立していれば、今の時期には、「EU体制は大丈夫である。従って、欧州経済に不安はない。よって、2018年の欧州経済も先進国経済も堅調に推移し、日本経済には更に明るい兆しが見えてくる」と言えたものと思いますが、ドイツの連立政権樹立は年を越してしまいました。

 即ち、先月20日にドイツのメルケル首相と第2党の社会民主党(SPD)のシュルツ党首が会談し、今後の政権協議の日程を決めたわけですが、政策のおおまかな方向性を話し合う予備交渉はこの年初から始め、本格交渉の開始は1月下旬以降にずれこむものと見られています。これによって、ドイツで総選挙後に正式な政権が存在しない期間は戦後最長となっており、この政治的空白は世界の不安を拡大しているのであります。メルケル氏が率いるキリスト教民主・社会同盟(同盟)とSPDとの予備交渉の開始は1月7日、そして、メルケル首相と話し合うSPDは当初の予定を延期して今月21日にボンで臨時党大会を開き、本交渉に進むかどうかを決めると言っています。SPD、シュルツ党首がこれほど、連立政権樹立を慎重に考えている背景には、やはり、ドイツ国民の、テロに対する不安の高まりに基づく、「ドイツ版自国第一主義」がじわじわと一般市民の間に拡大していることにあり、それをベースに政権運営の主導権獲得に色気を見せるシュルツ党首、SPDの野心も見え隠れしていることが考えられます。

 何れにしても、ドイツの連立政権樹立の動きは欧州経済全体に、そして世界経済にも影響を与える可能性があることから、年初より、大いに注目しなくてはならないイシューとなりました。ドイツの連立政権の早期樹立を強く望みたいと思います。尚、こうした中、実際にメルケル首相は、新年に向けた恒例のテレビ演説の中で、「世界は待ってくれない。ドイツが今後10年、15年と成長していく条件を作る為、迅速に行動しなければならない」と述べた上で、難航している新政権樹立に注力する決意を示しています。
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