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2007-04-23 08:11

日中エネルギー協力案件の推進に期待する

須藤 繁  シンクタンク研究員
 4月11~13日の日程で中国の温家宝首相が来日し、エネルギー分野では日中エネルギー閣僚政策対話に臨み、両国政府は省エネルギー技術の供与や原子力発電所の建設等で協力することを確認した。また同首相の訪日に併せて開催された日中エネルギー協力セミナーでは、日中の企業等がエネルギー協力案件6件の推進に合意した旨、発表した。6件のうち石油分野ではこれまで石油製品やLPGの融通等で協力関係にある新日本石油とCNPC(中国石油天然気集団)が協力強化を打ち出したこと等が注目されるが、石油上流分野で注目された東シナ海ガス田の共同開発に関しては、「必要に応じハイレベルの協議を行う、今秋までに具体化方策を報告する」とされ、具体的な進展を見なかった。

 日本と中国のこれまでの石油産業間の主要な関わりを振り返ってみると、1973年~2004年の30年以上にわたり、大慶原油の供給を受けたことが特記される。大慶原油の輸入は、日中間の貿易関係においては、日本の輸入額の5割以上を占めたこともあり、日本からは鉄鋼・プラント輸出等が行なわれるベースとなった。中国からこれをみれば、一時期には生産された大慶原油の2割を日本への原油輸出に振り向け外貨を獲得したのみならず、これにより、上海の宝山製鉄プロジェクトや上海、北京、大慶、山東等のエチレン石化コンビナートにおいてプラント・技術を導入し、また旧日本輸出入銀行(現在の日本国際協力銀行)からの資源バンクローンや旧国際協力基金の円借款制度の採用を引き出すことに繋がった。

 31年に及んだ大慶原油取引は2004年、中国側が石油需要増を背景に純輸入国になったことにより終了した。大慶原油を日本に供給する輸出余力がなくなった訳であるが、大慶原油取引というエネルギー産業にとっての共通の基盤がなくなった今、石油産業が依拠すべき共通の基盤をいかに構想すべきかといえば、日中関係を日本の産業界全体で受け止め、省エネルギー、代替エネルギー開発、地球環境対策等の点で相互の協力関係を構築して行くことであるように思う。その点からは実際問題として、既に昨年12月に、日本経団連、日中経済協会が中心になって、「日中省エネルギー・環境ビジネス推進協議会」が発足していることに留意する必要がある。省エネ・環境ビジネスは商業ベースとしては容易に確立しにくい面があるので、両国の関係企業・関係者の努力で着実に成果を挙げることが期待される。
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