国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-06-13 13:52

(連載1)移民受け入れ拡大方針

倉西 雅子  政治学者
 6月6日の日経新聞の朝刊一面には、「外国人就労 拡大を表明」の見出しで、安倍首相が前日5日の経済諮問会議で外国人労働者の受け入れ拡大を表明したと報じています。この記事には「選ばれる国」への課題とする小見出しが付されているのですが、この発想、本末転倒ではないかと思うのです。

 同会議において首相は「移民政策とは異なる」と説明しておりますが、国際移住機関(IOM)では、移民を「当人の (1) 法的地位、(2) 移動が自発的か非自発的か、(3) 移動の理由、(4) 滞在期間に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人」と定義していますので、これに当て嵌めれば、その資格の如何に拘わらず、外国人就労者はれっきとした移民です。おそらく、公約違反、あるいは、公約からの逸脱となることを怖れて‘移民’という表現を避けたのでしょうが、国民の側からしますと、政府に騙し討ちにされた気にもなります。

 こうした言葉の誤魔化しも然ることながら、この政策に潜む悪意は、“選ばれる国”という表現に凝縮されております。何故ならば、政府、並びに、その背後で蠢く国際勢力は、移民の受け入れを当然視するに留まらず、‘移民側のみに移住先の国家を選ぶ権利がある’と見なしているからです。逆に言えば、移民を受け入れるか否かの選択肢は、受け入れ国の国民には無いということになります。しかも、この政策は、決して合理的でもなければ、必然性もありません。

 第1に、移民受け入れ拡大の理由として挙げられている‘人手不足’は、根拠脆弱です。例えば、兼業農家が多数を占める農業分野における人手不足説は怪しい限りです(少なくとも稲作は凡そ機械化されている…)。それでも移民の必要性が強調されているとしますと、そこには、日本の農業形態を南北アメリカ大陸やアフリカ等に見られるプランテーション型へと転換させる意図が隠されているのかもしれません。本来、日本国の農業の未来については国民的な議論の下でコンセンサスを形成すべきところなのですが、国際勢力をバックとした政府は、外国人農業労働者の既成事実化によって、日本の農業形態を根底から崩しにかかっているように見えるのです。しかも、他の解決方法を模索しようともせず、各分野における‘人手不足説’に対する疑問に対しても、自らが恣意的に設定した推定数で押し切ろうとしています。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム