国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-08-03 10:55

(連載2)‘ユダヤ人’は他民族の自決権をも尊重を

倉西 雅子  政治学者
 また、カール・マルクスを始め、‘ユダヤ人’の中には、民族の固有性に関心を払わず、‘唯物的世界観’や‘世界市民主義’的な理想論を掲げる思想家も少なくありませんでした。常に諸国にあって‘異邦人’であった‘ユダヤ人’には、おそらく、他の一般の国民に対する反感や否定的な感情が、迫害に対する恨み、あるいは、逆恨みと混然一体となって染みついているのでしょう。

 同法案は、その意図するところの解釈に難しさがありますが、「イスラエルはユダヤ人にとって歴史的な母国であり、民族自決権はユダヤ人の独占的権利」と書かれており、一読しますと過激な表現にも思えます。しかしながら、逆に、民族自決権が他民族にも開放されれば、植民地支配や異民族支配、あるいは、移民支配は簡単に成立しますので(もっとも、イスラエル居住するアラブ系国民は先住している…)、何れの国の固有民族にあっても、民族自決権は、‘手放したら最後’となる死活的権利です。今日の基本的な国際体系は、人類の人種・民族・民族的気質の違いによる枠組を基礎とする国民国家体系ですので、歴史的民族の枠組の消滅は、国家、即ち、祖国の消滅をも意味しかねないからです。

 法文に見られるイスラエルの民族自決権への執着は、ある意味において、自らの祖国を維持したい全ての民族の自然な思いの極端な形での表現なのですが、‘ユダヤ人’が、移民推進政策を世界規模で後押ししていることを踏まえますと、民族自決権力を自らの民族にしか認めようとはしていないようにも思えます。ここに、‘ユダヤ人’の選民思想の問題点としての深刻なダブル・スタンダードが見て取れるのです。神から選ばれた‘ユダヤ人’だけが、唯一の民族、あるいは、超人類であり、他の民族は雑多な‘烏合の衆’としてその被支配者か、あるいは、下等な別種として扱いたいのでしょうか。仮に、そうでありましたならば、この傲慢で冷酷な態度こそ、ユダヤ人迫害、あるいは、反ユダヤ主義を引き起こしているとも想定されます。あるいは、現在、‘ユダヤ人’は、自らも国民国家の一つとなることを認めるイスラエル派と全世界支配を目指す非イスラエル派に分裂しているのでしょうか。

 人とは、‘自らを尊重する相手を尊重する’とされていますが、果たして、‘ユダヤ人’は、対等な立場から他の民族を尊重し、隣人として暖かい眼差しを以って接してきたのでしょうか。‘ユダヤ人’もまた、自らの来し方を自戒すべきなのではないかと思うのです。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム