国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2018-08-09 09:30

(連載2)朝鮮戦争は‘米ソ代理戦争’という複雑化要因

倉西 雅子  政治学者
 西側陣営の行動は東側陣営の攻勢に対する受け身であれ、朝鮮戦争が冷戦期における米ソ代理戦争の側面を帯びていたことは、今日にあって、なおも同戦争の終結を困難としています。何故ならば、仮に‘平壌裁判’の設置によって司法解決に至ったとしても、東アジアにおける軍事バランスの問題が残されてしまうからです。現状を見れば、ソ連邦の後継国であるロシアは、ウクライナやクリミア半島で牙を剥いたようにその覇権主義の旗印を降ろしていませんし、中国に至っては、共産党一党独裁体制の下で軍事大国化の道を邁進しております。

 ‘東側陣営’の世界戦略は朝鮮戦争当時と変わっていないどころか、むしろ、中国の台頭によって強化されていると考えざるを得ないのです。言い換えますと、中ロの覇権主義が終焉しない限り、根本的な問題は全く解決されないのです。このことは、朝鮮戦争を完全に終結させるには、司法解決のみでは不十分であることを意味します。朝鮮半島の安定には、まずは、米中ロの軍事大国を含む当事国間による、朝鮮半島の勢力圏に関する合意の形成という方法が検討されましょう。

 もっとも、この方法、極めて平和的な解決手段にも見えますが、中国が勢力拡大の意図を隠さなくなった今日、一時的な妥協としての大国間合意も根本的な解決をもたらさないかもしれません。近い将来、米中の軍事力が逆転した途端、この手の弥縫策的な合意は、即、空文化することでしょう。八方塞に見える中、それでは人類は、どのようにしてこの問題に対応すべきなのでしょうか。

 仮に、朝鮮戦争のみならず、国際社会における様々な紛争の背景に、大国の覇権主義という問題が潜んでいるならば、実のところ、人類は、この扱い難く、かつ、大国からの抵抗も受け易い問題にこそ真摯に取り組むべきなのかもしれません。特に中国は、全世界の諸国を支配下におさめかねない極めて危険な軍事大国に成長しつつあります。基本に立ち返ってみますと、共通のルールや行動規範の下で、全ての諸国が相互に権利と自由とを享受し得る状態こそ、国際社会の理想でもあります。人類が理想に近づくためには、日米を含め、自由主義諸国は、他国の安全保障を脅かす中国の国家体制を崩壊に導き、法の支配に基づく国際法秩序を構築すべく、より高度な戦略を展開する必要があるように思えるのです。(おわり)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム