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2018-08-27 11:42

宙ぶらりんな台湾

岡本 裕明  海外事業経営者
 世界の外交で最も扱いが難しい一つが台湾かもしれません。日本から近く、親日家も多い台湾の外交問題はアメリカからの圧力、中国からの圧力のはざまでもがいています。中国政府は今年初め、台湾に就航している航空会社に対してその表記について台湾を国家として思わせるような表記を変更し、一つの中国の枠内であるという形を強要しました。一部の航空会社は悶着しながらもその変更表記を受け入れてきましたがアメリカの航空会社はアメリカ政府の意向もあり、強く抵抗してきました。が、最新のニュースでは航空各社はどうやら降参することになりそうです。航空会社が政府の意向を無視し、バトルして勝つことはほとんど不可能であります。「しぶしぶ」というのが正直なところでしょう。ではこの台湾、一体主権はどこにあるのか、もう一度、歴史をサラッとおさらいしておきます。

 1894年の日清戦争にまでさかのぼりましょう。この戦争で勝利した日本は翌年の下関条約で台湾を清朝中国から割譲し、日本の領土とします。その後、1945年まで50年間も日本の一部であり続けました。日本はその20年前に台湾出兵を行い西郷隆盛の弟の西郷従道が台湾に、そして、大久保利通が北京で外交交渉をするという事件もありました。この時は大久保の不思議な引け際の良さで台湾事件は何事もなく収まったという経緯があります。さて、戦後、連合軍の委託で中国が進駐します。問題はサンフランシスコ条約等で日本の台湾の放棄は謳っているものの、誰がそれを引き継ぐか、という点が明記されていない点が問題の発端でありました。つまり、台湾は地位的に、あたかも新国家が生まれてもおかしくない状況にあったとも言えます。その頃、中国国内では内戦で国民党と共産党が激しい戦いをします。そして当時の首都であった南京が共産党により陥落します。1949年のことです。37年には日本軍に陥落されていますのでわずかな間に南京は二度も落ちてしまうのです。その為、国民党は台湾に逃げ、現在に至る、というのがだいぶ端折っていますが、歴史であります。

 こう見ると国際社会では台湾の位置づけを正式には決めていないまま中国国内での帰属問題で振り回されているとも言えます。ただ国民党が台湾に新国家を制定したとするならば独立宣言をその時にしていなくてはいけないでしょう。それはありません。また、その後も中国が台湾を実効支配しているわけでもなく、台湾の政権も中国寄りになったり、主権派が主導したりと揺れ動きます。近年、中国は台湾と国交を持つ国にそれを断絶させるための力技を継続し、形勢としては中国に押されていると言ってよいでしょう。一方、トランプ大統領は台湾関係を国防上重視し、軍備や防衛面でバックアップしつつあります。個人的にはアメリカのインタレストは台湾の所属問題というより太平洋上の防衛ラインという意味合いが強く、日本列島から台湾、フィリピンに至るラインを死守し、中国の太平洋への進出をしにくくするという戦略的意味合いだろうとみています。それ以上の意味はアメリカにとってあまりなく、台湾の主権問題に立ち入ることも現状である限りにおいてないとみています。但し、台湾が完全に中国に飲み込まれるという事態は避けたいはずで、そのあたりの駆け引きはどこかであるのではないかと思います。

 台湾の人にとっては実に宙ぶらりんであり、台湾内でもその帰属に揺れ動く毎日であります。案外、台湾の人にとっては国際ビジネスもできるし、海外旅行もできるという点からは不自由があまりなく、気にしていないのかもしれません。微妙な問題でありますが中国の実効支配という力づくの抑えかたは避けてもらいたいものです。
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