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2007-05-09 09:57

日中民間組織間の対話と客観的事実の認否

大河原良雄  グローバル・フォーラム代表世話人、世界平和研究所理事長
 中国の外交学会は外交部の外郭団体として外交部OBを中心に民間外交の推進に活動している団体である。私の所属する世界平和研究所は、同学会幹部来日の機会に4月19日と20日、同学会と共催で国際シンポジューウムを開催した。一日半は非公開で二日目の午後は公開のシンポジュームであったが、中国の温家宝首相の来日の直後であった為、日中友好の雰囲気の中での会議であった。専門家の集りの先方代表団との話し合いであった丈にかなり率直な話し合いが出来た様に思われた。

 温家宝首相は在京中、国会での演説のその他の機会に「昨年10月の安倍首相の中国訪問は日中関係の氷を割るものであったが、自分の日本訪問は氷を融かすものである」と強調していた。我々の会議では氷を融かした水をどう扱うかが関心の一つであった。中国側からは中日双方が同じ船に乗ってこの水の上を走り平和共存に向かって進むべきであるとの所論が述べられた。

 歴史問題や経済水域の境界線問題等多くの議論が闘わされた中で日本側が最も反発を禁じ得なかったのは、国連安保理常任理事国立候補の問題であった。日本側がこの問題について中国側の理解を求めたのに対し、先方は、中国は東南アジアでもアフリカでも日本の立候補に対する反対運動を展開した事はない。国連は加盟国の多数意見に従って意思決定を行う組織であり、日本のG4という形をとった立候補が国連の多数国によって否決されたのは、日本の支持獲得の為の努力が十分でなかったが故であり、中国の「反対運動」をあげて中国を非難するのは的外れであるとの議論を展開した。

 昨年春わが国は独、印及びブラジルの三国と組んで所謂G4として立候補を行ったものの国連の決議案採決において必要な支持票を得る事が出来なかった。その蔭で中国が東南アジア及びアフリカ等において日本反対の外交的働きかけを行った事は客観的事実であったといえるにも拘わらず、上述の如き議論が堂々と述べられた事は心外なことであった。

 最近の日中首脳の相互訪問を通じて、これまでギクシャクして居た日中関係が新しい展開を遂げる方向に向かっているとみられる状況の下、日中民間組織間の対話交流の場も拡がっていくであろうが、事実関係について相互に共通の認識と理解を分かち得る様な努力の必要性が痛感されるところである。
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