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2019-02-15 08:47

ベネズエラを救え

岡本 裕明 海外事業経営者
 南米にベネズエラという国があるのをご存知でしょうか?私も昔、プライベートジェットでブラジルに向かう際、給油で降り立ったことがありますが、その当時は南米屈指の富裕国、今では世界最悪級の経済破綻国となってしまいました。南米大陸の北端にあるこの国は石油資源が豊富で、埋蔵量は世界一とも言われます。しかし、石油産業にかかわる国民(0.5%)しかその恩恵を受けていないとされ、1999年に、その一般国民の高い不満とともに生まれたのがウゴ・チャベス政権でした。ところが同政権は独裁を貫き、反米を掲げ、隣国のコロンビアとも関係を絶縁するなど、社会主義政権とは思えない無謀ぶりを断行します。2013年にそのチャベス氏ががんで死去し、後を継いだのがニコラス・マドゥロ大統領であります。この大統領はチャベス政権よりさらに悪政で、私はその当時から何度か言及してきました。

 2018年5月の大統領選では不正投票や野党排除などの妨害があったとされ、そのマドゥロ氏の再選結果は、日本を含む第三国から厳しく非難されます。そんな中、1月に弱冠35歳の国民議会議長、ファン・グアイド氏は「自分が大統領である」と表明。アメリカ、英国、カナダや南米諸国からは「彼こそ大統領」というお墨付きをもらっています。つまり、国内ではマドゥロ氏が「自分が大統領だ!」と譲らず、海外諸国は「グアイド氏こそ、大統領だ!」と押しているわけです。そのマドゥロ氏ですが、全ての諸外国を敵に回しているわけではありません。中国やロシアは現政権を支持しており、昔からある世界の対立軸がここでも再現されている、といってよいでしょう。

 そんなベネズエラですが、経済は完全に破綻しています。IMF発表の同国の2018年インフレ率は170万%、2019年は1000万%と予想されています。目がくらみそうな数字です。つまり、自国通貨は完全に機能せず、闇ドルが流通しているのでしょう。南米でドル信奉が特に強いのは、過去のハイパーインフレ等を知っている世代の、自国通貨への不信感から来ています。一方、イングランド銀行は同行に預けられていた同国の金資産、1300億円相当分を引き出そうとしたマドゥロ政権に対し、Noを突き付けました。多分、今後、急速に世界の同国資産凍結が強まり、マドゥロ政権が早晩崩壊する可能性は高いとみています。現在、マドゥロ氏には軍幹部が味方しているとされ、グアイド氏は一般軍人とその家族を味方につける工作をしているようであり、個人的には革命的政権交代があり得るとみています。同国の歴史は内乱ばかりで今回、仮に政権交代があったとしても国民を安心させることができるかどうか、予断は許しません。また、中国が同国に貸し込んでいる資金、一説には5兆円規模の行方も、不明瞭になります。将来の中国の債権を一度チャラにするためにも形式上、ソ連のように一旦、国家破綻をさせて再構築し、アメリカなどからの資金の取り込みをしやすくした方がよいと思います。また、同国の安定は中期的には石油供給の安定につながり、石油価格への不安材料も減ることになると思います。ただし、同国の石油採掘関連の機器は古く使い物にならないような代物ばかりだったはずで、即座の安定供給にはつながりませんが、アメリカは再建を全面支援すると思われます。

 南米の小国の話ですが、世界の外交はこんなところでも熾烈な争いを繰り広げています。日本の外交が強力ではないと感じるのは、こういうところに積極的に戦略をもって関与していく姿勢でしょう。日本からみて地球の反対側のことだから、といってしまえばそれまでですが。中国は月の裏側での開発を着々と進め、NASAが焦っているという話もあります。もっとグローバルな視点でモノを見ていく必要はあるでしょう。
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