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2019-02-20 12:19

改善と改革

岡本 裕明 海外事業経営者
 日本人は改良をするのが得意だと言われています。トヨタの「カイゼン」という言葉は外国でも通じるほどですが、英語で改善を意味する単語、「improvement」をあえて使わないのは、「トヨタ式カイゼン」に深い意味があるということでしょう。そして、往々にしてそれは「日本的カイゼン」を意味します。しかし、「カイゼン」とは既存の製品、フォーマット、商品、サービスなどを改良することであり、本質的には「元」が一番大事なのであります。例えば自動車の場合、新型車で出るのが「元」で、モデルチェンジは「カイゼン」であります。

 日本の場合、ヒット作をマイナーチェンジさせながら、延々と引っ張るのが企業資産の上手な運営方法であります。他方、企業はサラリーマン的な保守的姿勢になり、新たなことをやって失敗するより今の成功を守る方がリスクが少ない、という発想が背景に生まれてくることも事実です。とはいっても、マイナーチェンジにも限界はあるわけで、ある日突然ライバルに追い越され、社内に新たなものを生み出す社風が残っていないと、全くついていけない状態になります。かつてのキリンとアサヒのビール戦争がその好例だったと思います。

 1月14日号の『日経ビジネス』誌に「10年後のグーグルを探せ」という特集がありました。これは瞬きを惜しむほどワクワクさせられる内容でした。世の中をすっかり変えるかもしれない数々のビジネスモデルが紹介されていますが、それらには、既存ビジネスのフォーマットを変える、という共通の原点があります。そして、それを顧客が受け入れる土壌があるか、がそのビジネスが普及するか否かの鍵を握っていると言えそうです。日本に未上場で、10億ドル以上の潜在価値がある「ユニコーン企業」は、現時点でプリファード ネットワークスたった1社しかない、という現実は何故でしょうか?今日、いわゆるユニコーン企業は世界に237社あるといわれ、その半分がアメリカ、4分の1が中国企業とあります。私はしばしば日本の大企業体質について苦言を呈していますが、新興企業の成長も芳しくないのは、なぜなのでしょうか?一つは国内市場の規模があるでしょう。ただそれ以上に、顧客が新しいものを試してみる、という風潮が少ないと思います。利用者が真摯な意見を提供することで、新興企業側が自社製品やサービスの精度を高め、レベルを上げていくという仕組みが、ニュービジネスへの支援となります。例えば日本の場合、企業側の勝手な自信で「完成」されたと思われるものを市場に送り出そうとします。しかし、企業側が「完成」という時点で、その後には上述の「カイゼン」しか残っておらず、「元」を変えることはできません。グーグルなりアマゾンは7割の完成レベルで市場に打って出て、市場との対話を基に、精度を上げていく仕組みとなっています。言い換えれば、両社があれほど巨大化したのは、いつまでたっても「元」の状態にあるから、と言えないでしょうか?

 巨大化できる企業には「完成」という言葉はなく、「元」がどんどん変質化していきます。よってそれは日本型カイゼンとも違うのでしょう。日本の宣伝のキャッチに「完成された輝き」、「未来系の完成」等といった、「完成」を売りにするセールストークを時折見かけます。しかし、「完成」といった瞬間、それ以上ない、ともいえるのです。世の中はより激しく変質化してきています。一つの製品やサービスの寿命は、数年から長くて十年という時代になってきているのです。ならば今の「完成」ではなく、時代の流れ、つまり、波に乗り続けるという経営スタイルに変わることが、日本企業が輝きを取り戻す第一歩ではないかと思います。また、波乗りは、気を緩めるとすぐにひっくり返る、という意味も感じてもらいたいところです。
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