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2019-07-11 16:50

(連載1)日本の措置はGATT条項に整合するか

緒方 林太郎 元衆議院議員
 日本が韓国に対して、輸出管理の強化を発表しました。経済産業大臣は「対抗措置ではない」と言っている一方で、官房長官は「信頼関係が無くなった事が理由」といった趣旨の事を話していて、どうも政府部内で整理が十分についていないように見えます(信頼関係が無くなったのが理由ではあるけども、対抗措置ではないという理屈も不可能ではありませんが)。
 
 何をするかというと、①半導体の材料となる3品目の輸出について、これまでは包括的に許可していたが、今後は貨物毎に許可を出す、②いわゆる汎用品(軍事用に『も』使えるもの)の輸出で、これまで韓国には許可なしで輸出出来ていたが(ホワイト国)、今後は許可が必要な国へとグレードを下げる、という2点です。政治・外交上の様々な駆け引きの話があるので、なかなか難しいのですが、自由貿易との関係で、GATT/WTOの通商法上はかなり危ない手法だと思います。私の感じでは「WTOの紛争解決まで持ち込んだ時に勝てる可能性は5割無いのではないか。」という所です。
 
 まず、安全保障による例外だと日本は主張しています。たしかにGATT21条には自由貿易の例外として「安全保障例外」があります。GATT21条(b)には、「締約国が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める次のいずれかの措置を執ることを妨げること」、とあり、その(ii)には、「武器、弾薬及び軍需品の取引並びに軍事施設に供給するため直接又は間接に行なわれるその他の貨物及び原料の取引に関する措置」と記載されています。日本はこれを根拠規定として安全保障例外を発動したのだと思います。この(ii)は読みにくいのですが、法令用語の読み方として以下のすべてを含みます(「及び」と「並びに」の使い方からしてこれ以外の読み方は不可能です)。①武器の取引に関する措置、②弾薬の取引に関する措置、③軍需品の取引に関する措置、④軍事施設に供給するため直接又は間接に行われるその他の貨物の取引に関する措置、⑤軍事施設に供給するため直接又は間接に行われるその他の原料の取引に関する措置。つまり、これらに該当する措置で、日本が自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認めるものであれば、GATT/WTOの自由貿易ルールの例外としてもいいとなっているという事です。
 
 一見して、「(今回の規制対象となった物品は)軍需品だろ?」と言いたくなります。日本語ではそう思いたくなるのですが、正文たる英語では「implements of war」です(勿論、日本語は正文ではありません。)。半導体の材料や(目的や使途が武器用でなければ)普通に日常生活でも使う品を「implements of war」と言えるかというと正直なところ疑問です。(つづく)
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