国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2019-07-17 16:49

(連載1)米中による地球分割は止まらない

中村 仁 元全国紙記者
 大阪で開かれた主要20か国首脳会議(G20)。世界人口(75億人)の6割、GDP(85兆米㌦)の9割を占めるとあって、首脳が勢ぞろいして記念写真を撮ると、会場は所狭しでした。世界を主導した時期もあった米日欧・先進7か国首脳会議(G7)の存在感は薄くなりました。それでは10年前から開かれているG20の時代がきたのかというと、そうではない。会議に合わせて開かれた米中首脳会議が最大の焦点になりました。「貿易協議は再開する。米国は制裁関税の対象を拡大しない」で歩み寄り、とりあえず関係国はほっとしました。
 
 関心のマトは米中、つまりG2です。G2とはいうものの、経済的な相互依存関係はあっても、政治的な信頼関係はまるでない。協力して世界主導する気持ちはなく、中国は覇権を握ろうとし、米国は防戦する。その過程で、G2が地球、世界を分割する傾向が強まっていくと、考えるべきなのでしょう。
 
 G20会議をめぐりメディアに登場した多くの論評で、私が「そういうことなのか」と、強く印象づけられたのは、ファイナンシャル・タイムズ紙の論者、マーティン・ウルフ氏の指摘です。米国の国家戦略について「対中100年戦争の愚」(6月7日、日経朝刊)という見出しの記事です。ポンぺオ国務長官、キシンジャー元国務長官らが出席した非公開の国際会議の議論から、「米国にとってついに敵対する相手が現れた」と米国は考えており、「中国との全面対決が米国の経済、外国、安全保障政策の中心的な関心事になりつつある」と、ウルフ氏は主張しています。
 
 かつてのソ連のように敵対する国が現れ、米国の国家戦略を一本化できるようになった。政治的リーダーの多くは、敵対する存在を求めています。そのほうが国民をまとめやすいし、選挙戦術に使え、好都合と考えています。トランプ大統領は言いたい放題、好き勝手な言動を繰り返しているようであっても、「ついに敵対する敵」を見つけたという思いに、それらは収斂されていきます。G20との関係でいえば、「現在のルールに基づく多国間秩序やグローバル化した経済が、今の米中対立を乗り越えて存在すると思ったら、大間違いだ」と、ウルフ氏は見立てます。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム