国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2019-08-26 17:48

(連載1)金融政策が機能しなくなる日

岡本 裕明 海外事業経営者
 この数十年、経済の調整機能は各国中央銀行の金融政策に委ねているところが大きくなっています。報道などでどこそこが利下げをした、利上げをしたと大きく報じられているのは、金融政策が経済政策において花形であって、それを行う中央銀行というものが、国家の、ひいては世界の経済の温度調整の主たる運営者として絶大なる信頼を得ているからであります。
 
 ところで経済学ほどエスタブリッシュされていない主要な学問も少ないでしょう。私も経済学部卒ですが、不動で明白なる理論がいまだに存在しないメジャーな学問であります。ノーベル賞の発表に経済学賞もありますが、あれも本来のノーベル賞とは別枠であり「ノーベル経済学賞」とは通常言わないのであります。単にほかのノーベル賞と一緒に授賞式をやるだけであれは「経済学賞」とノーベルの冠はつけないことになっています。
 
 今日、主流を占めている金融政策はマネタリストと称するシカゴ学派が主導するものであり、ケインズ学派を批判して60年代に勃興した学派の一つであります。学派とはいくつかある学問上の流派の一つであり、絶対ではないのでありますが、現代社会では金融政策の運営者たる中央銀行こそが経済のかじ取りの主導的立場にあると考えられています。そして中央銀行の政策に対して一般的には当該国の政府は関与せず、「独立性」を持たせることが多くなっています。その花形である金融政策運営者は金利の上げ下げを通じて貨幣量を調整することで景気循環をうまく乗りこなせると考えています。よって金利は下げれば景気が回復し、いずれ金利は上がるものだ、と信じられているわけです。ところが日本でその原則論は早々に崩れ、いつまでたっても金利が上がらなくなりました。いや、上げられなくなったといった方がよいのかもしれません。
 
 日本が低金利時代に突入したころはまだバブルの後始末が残る中であり、人々は疲弊する経済の中でようやく光明を見出した状態でありました。そこに金利引き上げ論が出た際に世論は「せっかくの回復も水の泡」「俺の住宅ローンはどうなる」と猛反対の声が出たのであります。金融政策担当者も人の子、結局、循環するべく利上げが達成できなくなったのです。(つづく)
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム