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2019-09-02 18:42

(連載1)傾聴に値する「不愉快な予言」

中村 仁 元全国紙記者
 米国を代表する世界的投資家といえば、ジム・ロジャーズ、ジョージ・ソロス、ウオーレン・バフェットらです。その一人、ロジャーズの中国、南北朝鮮、ロシアなどについての長期的な見通し、さらにトランプ米大統領、安倍首相に対する評価は、日本で語られているのとは全く違う見解です。これまで2度も世界一周の旅を敢行し、中国は3度、他の各国も訪ね歩き、自分の目で確認しながら情勢分析を続けてきました。国際情勢、マクロ経済政策、金融政策、社会トレンドなどを通して、超長期的な見通しを立てています。政治情勢、外交問題には深入りを避け、ファンダメンタル(地政学や経済の基本的条件)に従い、将来、どうなっているのかを予測する手法です。
 
 投資家ですから、将来をどう読み、資産をどう運用すれば儲かるかに最大の関心を置きます。その国の政治体制に重大な欠陥があっても、それよりも経済的価値に傾斜した見方を重視します。ですから、日本からみると、受け入れがたい将来像の提示だと、不愉快に思う人も多いでしょう。日本にいると、隣国である中国、南北朝鮮に関しては、直面する外交、安全保障問題、政治体制の欠陥にどうしても目を奪われます。日韓関係はまさにそうでしょう。ロジャーズ氏は中国や北朝鮮も訪れて、各国の実情を自分の目で見つめてきました。日本で定点観測している人ほど、視野が狭くなる。視野広げるには、同氏がいうような見通しにも関心を持ち、そんな見方もあるのかと考えるのも一つです。
 
 同氏はトランプ大統領の米国に失望し、さらに「21世紀は中国が最も重要な国、覇権国となる。アジアの時代が来る」との見通しに立ち、すでにシンガポールに居住地を移しています。その理由の一つは「娘の将来を考え、中国語を学ばせる。中国語の語学力とアジアでの経験は最上のスキルとなる」と。近刊の「日本への警告」(講談社㌁新書)での指摘です。 「自分は中国を3度、車で横断した。表向きは共産主義を装う中国は、実にうまく資本主義を取り入れている。厳密な共産主義が敷かれていたのは、せいぜい30年程度。彼らには長い起業家精神の歴史がある」「米国の8倍以上のエンジニアを毎年、輩出している。科学技術系の卒業生は中国470万人、米国56万人。市場競争では中国に勝てないと、保護主義のトランプは考えている」とも、書いています。
 
 日本論では「日本語しか話せなかったら、ビジネスチャンスを得られまい」と、指摘します。さらに「少子化、巨額の財政赤字、アベノミクスによる異常な金融緩和」を酷評します。円安で日本企業が息を吹き返したという見方に対しては「通貨切り下げが一国の経済を成長させたことは一度もない」と。「少子化と国の長期債務の問題を抱える日本は、長期的には衰退する」「18年秋に日本株を全て手放した。株であれ通貨であれ、日本に関連する資産は何も持っていない。日本経済を破壊するアベノミクスが続き、人口減少問題も解決できない限り、この判断を変えない」。世界を見まわし、各国を歩いてきた投資家の目にはそう映る。日本中心の定点観測を続け、「日本は大丈夫」という識者の耳には痛い。(つづく)
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