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2019-09-13 13:21

(連載1)金融緩和より金融軍縮会議を

中村 仁 元全国紙記者
 世界貿易、国際金融は異常な、異様な事態に陥っています。「第二次世界大戦(1939-1945)前夜」に似てきたとの声も聞かれます。世界大戦に突入するのを防ぐため、ワシントン海軍軍縮会議(1921)、ロンドン海軍軍縮会議(1930)が開かれ、海軍力を制限(戦艦の増強競争の抑制)する条約を結びました。そうした歴史を思い起こす必要がある時です。
 
 先日、フランスで開かれた主要国会議(G7)がこうした世界規模の問題を取り上げることを期待しました。それなのに、トランプ米大統領は「不参加」をほのめかし、対立が表面化するのを恐れたマクロン仏大統領の意向に沿い、一枚紙の素っ気ない首脳宣言が発表されたにすぎませんでした。メディアや識者のコメントをみると、表面的な指摘が目立ちました。「マクロン氏はG7の亀裂が広がるのを抑えるのに成功した」「安倍首相が香港問題でアイディアをだし、香港の自治を認めた中英宣言の重要性を宣言文に挿入するのに貢献した」などなど。もっと本質的な深みのある分析がほしい。
 
 国際金融は時限爆弾を抱えています。政府、企業、家計を合わせた世界の債務残高(借金の総額)は、180兆㌦(2018年末)という人類史上最大の規模に膨張しています。円換算では1京9000兆円(京は兆の1万倍)で、想像を絶します。主に日米欧の中央銀行、政府経由の通貨供給が主な原因です。景気後退の回避、デフレ回避、バブル崩壊の回避が、こうした異次元緩和の背景です。「国際協調の精神で、景気後退を防ぎ、バブルの崩壊を未然に阻止しようしている」というのがよく聞かれる解説です。「国際協調」といえば、聞こえはいい。実態は金融緩和競争です。際限のない緩和競争に歯止めをかけるには、緩和競争を方向転換させる「金融軍縮」が必要です。一国だけでは対応できません。
 
 かつての海軍軍縮会議の金融版が必要です。軍縮会議は結局、成功せず、大戦へと突入しました。第二次大戦は人類史上最大の戦争となり、死者5000万人、兵器競争の果てに、原子爆弾まで登場しました。約2京円という借金の重みに耐えられなくなれば、バブルの崩壊です。かつての原子爆弾の投下を連想させる破壊力を持つ。バブル崩壊が起きると、金融緩和の追加策がとられる。通貨供給量や借金総額がまた膨張し、次の原子爆弾となる。バブルの連鎖は止まることはない。まずい。(つづく)
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