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2019-10-08 16:47

(連載1)バランスが崩れた日米貿易協定交渉

緒方 林太郎 元衆議院議員
 日米貿易協定に関するテーマで一番大きな「この協定は結局、どう見たらいいのか。」という事について順序を追って書いていきます。まず、日米が元々合意していたのはTPP12でした。安倍総理は、平成28年12月08日参議院TPP特別委員会で、TPP12について、「バランスの取れた」協定だと評価しました。私も概ねこの安倍総理の評価を共有します。説明や影響試算に小手先の嘘が多かった事は極めて残念でしたが、中身そのものは評価し得るものだと思います。しかし、トランプ大統領はTPP12に加わらず、日本との間での二国間交渉に乗り出します。ここで安倍総理の言う「バランス」が崩れます。平成30年9月26日日米共同声明をよく読めば分かりますが、日本はTPP12での譲歩まではやれると言い、逆にアメリカはそういうコミットメントがないだけでなく、そもそも何を企図しているかさえ分かりません。
 
 つまり、交渉の土俵作りの段階で既にTPP12で得られたバランスは崩れており、しかも、相手が何を企図しているのか分からない状態で交渉に突入したというのが、この日米貿易交渉でした。過去、日本は半導体協議で「20%」という数字を出したら数値目標化して苦しんだとか、保険協議で「激変緩和措置」という言葉を使ったら、それを「日本の生損保子会社のがん保険への参入不可」と読み替えられたとかいった経験があります。アメリカとの関係ではこういう曖昧模糊とした表現が危険な事が、日本の交渉担当官のDNAに刻まれていないのではないかと不安になります。
 
 そして、今年9月の国連総会時に合意します。日米貿易交渉の結果は、今出ている情報だけであれば、確かに昨年9月の共同声明の範疇に収まっています。しかし、問題はそこではないのです。日本は「TPP12の譲歩からちょっと下がっただけ」ですが、アメリカは「自動車及び部品で一切の譲歩をしない」としたのです。アメリカは日本の立場をちょっとだけ尊重したけど、日本はアメリカの立場を過度に尊重した、そんな感じです。
 
 繰り返しますが、今回の結果は昨年9月の共同声明の範疇に収まっています。ただし、共同声明自体がTPP12で得られたバランスが崩れた状態です。かつ、そのバランスが崩れた土俵で戦った結果、更にバランスが崩れた、という事で、二重にバランスが崩れているのが今回の交渉結果だと見る事が出来るでしょう。(つづく)
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