国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2020-01-24 14:49

中国経済減速、見方を変えればむしろ良い

中村 仁 元全国紙記者
 中国経済の減速を懸念する声が圧倒的に多いようです。共産党独裁の習近平政権にとっては、国民の不満が高まるので、懸念するのは当然でしょう。中国は巨大市場ですから、世界経済への影響も大きく、日本を含め諸外国も懸念しています。私はその逆で、懸念はせず、中国経済の減速を歓迎します。中国経済が減速すると、対中輸出が減り、特に日本への影響は大きいでしょう。「世界のビジネスに暗雲」だとか「減速に歯止めをかけ、持続的な成長の確保を」といったトーンの記事が多い。エコノミストのコメントの多くが中国の現状、将来を懸念しています。私はそのことをむしろ懸念します。
 
 新聞の見出しを見てみましょう。「中国6.1%成長に減速/29年ぶり低水準」(日経)、「中国経済に高齢化の影/迫る団塊世代の退職、しぼむ内需」(同)、「中国経済が勢い失う/世界経済に影/日本企業は受注減」(読売)。成長鈍化にがっかりした受け止め方や分析が大勢を占めています。しかしながら、中国経済はむしろ減速したほうが世界のためになる、という側面を見落としてはいけません。中国は富国強兵路線を続け、驚異的な経済成長が超大国に押し上げてきました。今後も軍事的な膨張が続いたら、米中の覇権争いは激しさを増します。「一帯一路」と称して、昔のシルクロード沿いに巨額の資金も貸し付け、中国経済圏に取り込もうとしています。
 
 また、香港の民主化要求のデモを弾圧する中国が、さらに強大になるのは好ましくありません。国民の自由を認めない国が存在感を高めていくと、世界における民主主義国は影が薄らいでいきます。すでに民主主義国において、政治の独裁色が強まり、民主主義は斜陽の時代を迎えています。地球温暖化、大気汚染の問題はどうでしょうか。中国の一酸炭素(CO2)の排出量は年間93億トンで世界最大です。2位米国は47億トンで、この2国だけで排出量の半分近くを占めます。中国は「2030年前後までに排出を減少に転じさせる」という方針です。CO2問題はこれまで先進国が垂れ流してきた結果であるというのが、中国の本音です。本気で削減に取り組むつもりはないようですから、経済・産業活動が減速する結果、CO2排出量が減っていくことしか期待できません。この面からも、中国経済の減速を歓迎します。
 
 中国経済の減速は、リスク回避的な金融財政政策、米中貿易戦争、中国にもやってきた少子高齢化などに起因しています。さらに経済数値の水増しをなくし、正確な統計の発表に転換しようとしているのかもしれません。ですから習政権の意図した結果、経済・人口構造の必然的な結果ではありましょう。「14億人の人口大国は、並み外れた超大国に変容するのか。そうは思わない。出生率は低下を続け、高齢化は加速し、中国人は裕福になる前に老いてしまう」。仏の歴史人口学者、エマニュエル・トッド氏の予想(読売、1/12)です。それなら大いに結構ですね。経済専門家は成長率の鈍化を懸念し、政治・外交の専門家は中国の軍事的な脅威を懸念しています。双方にまたがる論評が必要な時です。経済・産業界も、もっぱら対中輸出論を軸に中国経済を論じる習性から脱皮すべきでしょう。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム