国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」
ホーム  新規投稿 
検索 
お問合わせ 
2007-06-15 09:55

JANZUS構築を目指して

佐島直子  専修大学教授
 日豪両国は、3月に署名された安全保障共同宣言に基づき、6月6日、初の外務・防衛担当閣僚による「安全保障協議委員会(2プラス2)」を開き、日米豪3カ国による防衛協力の強化や、日豪両国がそれぞれ実施する演習や訓練への相互参加を盛り込んだ共同発表文書を公表した。会合では両国が大量破壊兵器(WMD)拡散問題、国連平和維持活動(PKO)、シーレーン(海上交通路)の安全確保といった分野で協力を促進することで一致、6月中に豪州で行われる演習への自衛隊のオブザーバー参加や、日本が実施する国際緊急援助隊総合訓練への豪州の参加が発表文に盛りこまれた。また、平成15年に締結した防衛交流に関する覚書を改定する点でも合意した。

 3月16日付の本欄への投稿で述べた通り、筆者は過去十数年、日豪の防衛協力強化の必要性を唱えてきた。したがって、今回の「2プラス2」によって、その実効性が具現化することを大いに評価している。しかし実は、同時に、筆者の脳裏にはふと「ある過去の事例」がよぎっている。それは、1995年年末に豪州労働党政権が「豪州・インドネシア安全保障維持協定」を締結したものの、翌年の総選挙で惨敗した事例である。労働党政権が長きにわたって主導した悲願の外交的成果は選挙の争点にならなかった。そして、その後、両国関係は東チモール問題を巡って迷走した。

 くしくも日豪両政権には民意の洗礼が待っている。ところが、年金問題を抱える安倍政権には夏の参議院選挙の苦戦が予想され、秋以降と目される豪州の総選挙でもハワード政権の勝利は非常に微妙である。さらに米国も来年の大統領選挙を控え、ブッシュ政権のレームダック化は深刻である。つまり、日米豪の安全保障関係がさまざまな形で深化する一方で、近未来的には、それらを推進してきた政治勢力の弱体化が一時的にせよ予想される。

 しかし、9.11同時多発テロ後の変容著しい安全保障環境にあって、アジア太平洋の先進民主主義グループとして、JANZUS(日米豪にニュージーランドを加えた四カ国)関係の協調と連携が果たす役割が非常に大きいことは、各国にどのような政権が誕生しても変わりがない。日豪防衛関係においては、一日もはやく実務レベルの連携や共同訓練等の制度化を進め、豪州・インドネシア関係のような「(いわゆる)政治」の犠牲にならないことを希求する。戦略的な安全保障関係が、近視眼的な政争によって、置き去りにされたり、いささかでも揺らいだりすることは望ましいことではない。
お名前は本名、またはそれに準ずる自然な呼称の筆名での記載をお願いします。
下記の例を参考にして、なるべく具体的に(固有名詞歓迎)お書き下さい。
(例)会社員、公務員、自営業、団体役員、会社役員、大学教授、高校教員、大学生、医師、主婦、農業、無職 等
メールアドレスは公開されません。
ただし、各投稿者の投稿履歴は投稿時のメールアドレスにより抽出されます。
投稿記事を修正・削除する場合、本人確認のため必要となります。半角10文字以内でご記入下さい。
e-論壇投稿の際の注意事項

1.投稿はいったん管理者の元へ送信され、その確認を経てから掲載されます。
なお、管理者の判断によっては、掲載するe-論壇を『議論百出』から他のe-論壇『百花斉放』または『百家争鳴』のいずれかに振り替えることがありますので、予めご了承ください。

2.投稿された文章は、編集上の都合により、その趣旨を変えない範囲内で、改行や加除修正などの一定の編集ないし修正を施すことがありますので、予めご了承ください。

3.なお、下記に該当する投稿は、掲載をお断りすることがありますので、予めご了承ください。

(1)公序良俗に反する内容の投稿
(2)名誉や社会的信用を毀損するなど、他人に不快感や精神的な損害を与える投稿
(3)他人の知的所有権を侵害する投稿
(4)宣伝や広告に関する投稿
(5)議論を裏付ける根拠がはっきりせず、あるいは論旨が不明である投稿
(6)実質的に同工異曲の投稿が繰り返し投稿される場合
(7)管理者が掲載を不適切と判断するその他の理由のある投稿


4.なお、いったん投稿され、掲載された原稿の撤回(全部削除) は、原則として認めません。
とくに、他人のレスポンス投稿が付いたものは、以後部分的であるか、全部的であるかを問わず、いかなる削除も、修正もいっさい認めません。ただし、部分的な修正については、それを必要とする事情に特別の理由があると編集部で認定される場合は、この限りでありません。

5.投稿者は、投稿された内容及びこれに含まれる知的財産権(著作権法第21条ないし第28条に規定される権利を含む)およびその他の権利(第三者に対して再許諾する権利を含む)につき、それらをe-論壇運営者に対し無償で譲渡することを承諾し、e-論壇運営者あるいはその指定する者に対して、著作者人格権を行使しないことを承諾するものとします。

6.投稿者は、投稿された内容をその後他所において発表する場合は、その内容の出所が当e-論壇であることを明記してください。

 注意事項に同意して、投稿する
記事一覧へ戻る
グローバル・フォーラム