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2020-08-20 18:42

(連載1)米副大統領候補の人選から学ぶ日本の政治人材の貧困

中村 仁 元全国紙記者
 米大統領選でトランプ氏に挑む民主党のバイデン氏(77)がいかにも頼りなさげと思っていましたら、副大統領候補選びで大胆な選択をしました。選ばれた黒人女性のカマラ・ハリス上院議員(55)は、一期で退任しそうな高齢のバイデン氏の後任大統領の可能性が十分にあるといいます。米国の多様性、バイタリティには感動します。初の黒人大統領になったオバマ氏は、実の父親の出身国がアフリカ・ケニアでした。ケニアで暮らす祖母が、当選祝いを述べる映像がテレビに流れ、「えっ、アメリカとケニアの組み合わせ。これがアメリカの実像なのだ」と、思った人は多いでしょう。
 
 白人が有権者の67%を占める米国であっても、非白人が増加していることもあり、国の将来を考える上では、人種にこだわらない選択を決断する。ハリス氏はジャマイカ系の父、インド系の母を持つ。異なる人種の血が混ざると有能な人材が誕生することが少なくない。風貌もエネルギッシュで野心家的です。野心的な人材が政界に流入し、頂点を目指す。米国政治のドラマを見せつけられ、それに対比して感じるのは、日本政界の沈滞、淀みです。2世、3世の世襲議員が自民党政治の骨格をなす。県や市よりも小さな選挙区(小選挙区)で戦っていればよく、政治家の小型化が進んでいます。
 
 日本の長期的な経済停滞は、政治の淀みに起因するような気がしてなりません。そうした視点からの問題提起を怠る政治ジャーナリズムも、同様に沈滞しています。世論調査(読売、8/10)によると、「次の首相はだれがふさわしいか」の答えは、石破茂24%、小泉進次郎16%、河野太郎13%、安倍晋三12%などで、これらは世襲議員です。世襲主義の問題点を政治ジャーナリズムは書かない。反安倍か、親安倍か、あら探しにばかり励んでいます。将来の女性首相候補となると、政治記事には、稲田朋美、小渕優子らの名前が登場します。彼女たちは、国会対応のまずさ、政治資金でのつまずき、指導力のなさなどで、とても首相になれる器でないのに、記事に登場してくる。「女性重視の時代だし、とりあえず書いておこう」という程度の意識なのでしょう。
 
 民主党の副大統領候補に名を連ねたハリス氏ほか、ライス元大統領補佐官、ウオーレンら複数の上院議員、州知事のリストには、多彩で迫力を感じました。将来の大統領候補にもなるわけで、小粒ばかりの日本の女性議員とは比較になりません。米国は2世、3世といっても、移民の第2、第3世代が大統領、副大統領を目指す。白人が移住して建国したのが米国ですから、それがまた可能な社会です。「史上最悪の大統領を選んでしまった」と酷評されるトランプ大統領は、父親がドイツからの移民です。それを白人の大統領候補と黒人の副大統領候補が組んで、排除しようとする。(つづく)
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