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2021-01-07 16:04

長射程ミサイル開発の意義

加藤 成一 元弁護士
 最近の報道によると、日本政府は、研究開発中の「新型対艦誘導弾」の射程距離を2000キロとし、さらに、陸上自衛隊が運用する「12式地対艦誘導弾」(「SSM」)の射程距離を現行の百数十キロから数百キロとし、将来的には1500キロにまで延伸する案が浮上しており、「長射程国産ミサイル」の整備を進める方針である(12月29日付「産経新聞」)。
 
 日本政府は、上記方針に基づき12月18日、長射程であるため敵の攻撃圏外からも対処できる「スタンド・オフ・ミサイル」(長射程巡航ミサイル)の国産開発を閣議決定した。スタンド・オフ・ミサイルの国産開発は、主として尖閣諸島など南西諸島防衛を目的とするものであり、2018年の防衛大綱と中期防にも明記されている。このミサイルは、陸上・艦船・航空機にも配備可能とされている。これにより、日本の抑止力が一段と強化されることが期待されるのである。
 
 日本が北朝鮮や中国本土を射程に収める長射程のミサイルを保有する目的は、これらの国に対して先制攻撃をするためではなく、反撃報復能力を取得することによって、対日軍事行動を躊躇させるためである。日本が、超音速、高性能、長射程の巡航ミサイルを国産開発して、数千発を配備した場合、万一、上記の国が対日軍事攻撃を行ったとしても、自衛隊は保有する数千発の新型ミサイルでの反撃が可能となる見込みだ。相手に自国の政治的・軍事的中枢部を徹底的に破壊される可能性を想起させることができるだけで、日本にとっては強力な抑止力となるのである。
 
 「専守防衛」とは、日本は他国に対して先制攻撃はしないが、万一、他国から先制攻撃を受けた場合はこれに対して反撃し、日本の領土と国民を守る概念である。そうだとすれば、上記の通り、長射程のミサイルの保有は先制攻撃を目的とするものではなく、先制攻撃を受けた場合に反撃するためのものであるから、専守防衛の概念に反しない。これは、日本の「専守防衛力」を一段と強化し高めるものに他ならないのである。
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