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2021-05-18 16:52

(連載1)クリミア併合と台湾

緒方 林太郎 元衆議院議員
 日米共同声明における「台湾」の扱いがとても注目されていますが、私の考えは「日米共同声明を読む」(e-論壇「議論百出」、2021年5月11日)で書きました。それよりも、私はずっと気になっているのが「ロシアによるクリミア併合への日本の対応が中国側にどういう印象を与えているのか。」という事です。あれは2014年に一方的にロシアがクリミア半島を併合した案件でして、その時に日本を始めとする国際社会がどう対応したかに中国は間違いなく注目しているはずです。自分達が台湾に軍事侵攻した際、国際社会がどう判断するかの基準となると思っているでしょう。
 
 日本が取った措置は、大まかに言って「クリミア半島との貿易停止」、「関係者の資産凍結、入国制限」、「ロシアとの各種交渉、協議の停止」でした。時期的には国際社会よりもワンテンポ遅れました。そして、内容を見てもほぼ具体的な影響無しでしょう。つまり、「けしからん」と言いつつ全力で空振りをしたという事です。しかも、2年後の2016年にはプーチン大統領訪日で3000億円の経済パッケージを提示しています。北方領土交渉をやっている中でプーチン大統領が(多数国間の枠組み以外で)訪日したのはこの時だけです。
 
 なお、この時のパッケージは民間企業を巻き込んでの大規模なものでした。当時、安倍総理は「公金の投入が3000億円なのではない」といった趣旨の発言をしていました。ただ、ビジネスベースに乗るものであれば、別に政府が旗を振らなくても出資、融資等をしていたはずです。私は政府がリスクの大半を引き受ける形でこれらのプロジェクトが成立していると見ています。今でも何をやったのかがよく分からないのですが、昨年のJOGMEC法改正は、エネルギー特別会計でこの時のケツ拭きをするためのものが含まれているとも言われます。検証が必要です。
 
 その他にも、例えば、2016年にシリアのアレッポ空爆が行われた際、G7で声明を出そうとしましたが、日本だけが乗りませんでした。結果、6ヶ国での声明にグレードダウンしました。アサド政権の背後に居るロシアに日本が配慮したと見るのが常識的な見方です。同時期に予定されていたプーチン訪日と北方領土交渉に影響させたくなかったからです。そして、日本がこれまで貫いてきた、北方領土の「不法占拠」、「固有の領土」といった表現もかなり後退させました。(つづく)
 
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