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2021-06-08 21:33

(連載1)二流の政治が経済でも日本を二流にする

中村 仁 元全国紙記者
 高橋洋一・内閣官房参与(嘉悦大教授)が無責任なツイッター投稿を批判され、辞任しました。新型コロナ感染者を各国比較すると、「日本は『さざ波』程度。緊急事態宣言は行動制限が弱い『屁みたいな』もの」などの表現が物議を醸しました。日本の状況は相対比較すれば、欧米のような大波ではない。それを冷静な言葉で語るのならともかく、医療崩壊に苦しむ地域がある中で、政権の人間が小ばかにしたような言葉を投げつけるのはまずい。本人は言葉尻をあえて掴ませようとして投稿した、と想像します。高橋氏を擁護する識者もおり、ネット社会はそれがうれしいのでしょう。この上なく残念だったのは、菅首相の「これ以上迷惑をかけられないということで辞任された」との発言です。本人の意志のせいにしました。首相は「官房参与としては失格。解任した」と語るべきでした。
 
 「日本は後進国になった」をよく聞きます。こんな二流政治、二流人材を使っている政治だから、「後進国」に転落するのでしょう。高橋氏は安倍内閣の際に、官邸スタッフ(06年)に採用されました。大蔵省では本流ではなく、風変わりな異端官僚でした。「霞が関には埋蔵金が存在する。政府紙幣の大量発行で景気回復を試みる」「日本の財政再建のためには、大胆な金融緩和で経済を成長させ、税収の自然増を図る」などと主張し、安倍氏の気を引きました。大蔵省出身の黒田日銀総裁も異端で、「デフレ脱却のため」と称し、安倍氏と二人三脚で、異次元金融緩和と財政拡大の道を突き進みました。デフレ脱却の効果がでないうちに、主要国最悪の財政状態を招きました。
 
 俗受けする政策に誘惑される二流の政治は、経済政策では二流の人物を重用してきました。浜田宏一、本田悦朗氏ら、側用人のような取り巻き官僚の一群もそうです。高橋氏の辞任で、その思いを深くしました。株式市場では日銀の存在が肥大化し、市場メカニズムが働かない。日銀が株価を下支えし、業績不振の企業も淘汰されない。金利の変動で財政支出を抑えるメカニズムではなく、財政膨張派の二流政治が差配する。
 
 欧米はゼロ金利からの出口に向かう段階に入っているのに、日本は出口の議論さえ封じています。日本は入口で先行したのに、肝心の出口では遅れる。日本はさらに経済二流国に流されていくのでしょう。最近「日本は後進国に転落したか」といった問いかけがしきりです。死語になったはずの「後進国」との言葉には実感がこもっています。(つづく)
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