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2021-06-10 21:34

(連載1)中国経済とどう向き合うか

岡本 裕明 海外事業経営者
 中国が火星に無人探査機を着陸させ、その探査車が活動を始めます。つい3か月前、アメリカが史上初の火星着陸を成功させたという記事を見たばかりです。米中の先端技術力がネックトゥネック(わずかな差)であることを見せつけました。かつての米ソの宇宙開発競争と同じようなシーンだと思っている方もいるでしょう。(あの時、アメリカはソ連の後塵を拝しました。)
 
 テスラが中国で生産を開始したのは大量生産によるコストダウンを一番たやすく実現できるからだと考えたのでしょうか。テスラに限らず多くの日欧米の製造会社はそう考え、中国に進出しています。しかし、中国の考え方は技術を学んだら(=盗んだら)あとは自前でやるからいらない、というものです。その方針は過去、一度も崩れたことはありません。新日鉄の上海、宝山鋼鉄支援の話は好例だし、川崎重工の中国新幹線問題もありました。テスラがそれに気が付き始めたのは最近だろうと思います。このまま中国への傾注を進めてよいのだろうか、と。上海の工場増設を凍結したのもさまざまな理由があると思いますが、一つには中国のテスラへの冷たい仕打ちがあります。テスラで事故にあったニュースを延々と流し続け中国人にネガティブイメージを植え付けました。中国が得意とする洗脳効果は漢方薬のようにじわっと効いてきます。中国テスラは欧州向けの他、日本にも積極的に売り込んでおり、中国テスラの日本での売り上げが一気に9倍になった(20年1-3月比で96台が879台になっただけで、台数は知れています)と報じられていますが、中国国内向けへのシフトに苦戦しているように見えます。
 
 そもそも中国ではEVメーカーは群雄割拠の状態です。50万円を切る宏光ミニEVの躍進にみられるように生活の足代わりとしてのEV需要が爆発しており、その間にインフラが拡充されるという大成長期にあります。テスラは高級EVとしてシェアを取れるのか、厳しい立ち位置にあるように見えます。(アメ車が日本で売れなかったことを思い出してください。自前主義はいつでもあるのです。)
 
 中国とどう向き合うか、様々な見方があるし、トランプ氏の生み出した米中対立軸をバイデン氏がどう展開するのか、時間が経ち、戦略に異論も持ち上がってきています。マレーシアのマハティール元首相は「徐々に中国との摩擦を緩和し、対話を進めることができるのではないか」と述べ、「(日米豪印の)クアッドは『古い戦略だ』として、各国が個別の外交によって中国に対応する方が望ましいとの考えを示した」(日経)とあります。また、イアン・ブレマー氏は日経に「中国との『競争的共存』目指す米国」と題した寄稿をしています。「短期的には両国は追加関税や経済制裁の応酬を続けるがバイデン政権は幸いにも実務的である。アメリカの中国に対する厳しい姿勢に対し諸外国からの様々な意見にアメリカは敏感で、各国にこうした苦渋の決断を迫った場合の限界も分かっている。そこで、資本主義の原点である競争に立ち戻ろうとしている」(筆者超要約)と述べています。(つづく)
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