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2007-08-03 11:58

連載投稿(2)中国の環境・省エネ対策、待ったなし

須藤繁  シンクタンク研究員
 中国で環境・省エネ意識が高まる中で、折りしも二つの国際機関が中国の環境汚染状況に関する報告書をまとめた。世界銀行による「中国における汚染の費用~損害の経済的評価」と経済協力開発機構(OECD)による「中国の環境実績回顧」の二つである。その中で、OECD報告書は、中国政府による環境対策が実績を上げつつあると評価する一方、大気汚染や水質汚染の深刻さを指摘しており、最終的に今後中国政府が採るべき対策として51項目を勧告し、2年以内での報告を求めている。

 しかしながら、同報告書は、その内容よりも、7月3日付けフィナンシャル・タイムズ紙が「OECD報告書からは、中国の都市部における劣悪な大気汚染によって年間35万人から40万人が早死にしているとの調査結果の部分が削除されたほか、さらに年間約30万人が悪質な空気調整機や建築物内部の汚染物質などによる室内の空気の悪化によって早死にしているとの指摘部分も削除された。国家環境保護総局と保健省が、報告書の原案を見た段階で、社会不安を招きかねないとして関連部分の削除を求めた」と報じたことが、大きな注目を集めている。

 7月17日に北京で行われた中国政府とOECDの報告書に関する覚書の調印に同席した国家環境保護総局の高官は、同紙報道に関し「汚染の健康への影響の分析は極めて複雑な問題であり、世界共通の科学的方式がなければ、環境と健康に関するいかなる調査も説得的ではない。中国当局でさえ信頼のおける調査を行えていないのが実情である」として「中国政府は、汚染によって毎年75万人が早死にしているとの部分を含む報告書の1/3の削除を世界銀行に求めた」との報道内容を否定した。

 こうしたやり取りの後の7月27日、中国国家発展改革委員会が省エネルギー及び廃棄物排出量の削減向けとして既に2007年に入って支出してきた200億元に加えて、新たに100億元を追加投入することを明らかにした。胡錦涛国家主席も28~29日の両日、浙江省杭州の企業などを視察した際に、「真の経済発展の実現に向けて、循環型経済を発展させねばならず、それには省エネルギーと環境保護の着実な実行が必要である」と述べ、改めて協力を求めている。

 中国国家環境保護総局の藩岳副局長が20日に述べたように「環境汚染が著しい企業や事業向けの融資に規制を導入することで、二高(高エネルギー消費・高汚染排出)の産業界での拡大を防止すると共に、これら企業に関する情報を蓄積し、融資時の判断材料として活用する方向に動こうとしている」のは、評価すべき方向であると思う。中国の環境汚染実態の全貌を正しく把握することには大きな困難があるとしても、環境対策・省エネ対策を効果的に導入することにおそ過ぎるということはない。(おわり)
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